私の先輩《F》1 ページ9
思い切り息を吸い込んで、ゆっくりと細く吐き出した。
何度繰り返しても一向に落ち着かない心臓は、バクバクと鳴り続けて、今にも口から飛び出してきそうだ。
「……よしっ!」
気合を入れるように、手に持ったスーパーのビニール袋をギュッと握って、目の前のインターフォンに冷え切った指先を押し当てた。
― ピンポーン
軽快な音が響いて、それから、愛しい声が聴こえる。
「はい。」
「あっ……Aです。」
何て名乗るのが正解かわからなくて、カレが私を呼ぶ様に、名前を告げるとインターフォン越しにクスリと笑われた。
― ガチャ
「待ってたよ。」
開いたドアの向こうから、カレが顔を出した。
あぁ……カッコイイ。
こんなにステキな人が、私の彼だなんて信じられない。
「あ、お、遅くなっちゃって……。あの、残業頼まれちゃって……。」
シドロモドロになりながら、遅れた理由を述べると、また、くすりと笑って、「どうぞ。」って、ドアを大きく開けた。
「おじゃまします……。」
ドアを開くカレの腕をすり抜けるように部屋に入ると、カレと同じ甘い匂いがした。
ドキドキが加速する。
「あ、あのっ、藤ヶ谷先輩の好きな……。」
そこまで言ったところで、手に持ったビニール袋を胸の前に上げて振り向くと、ドアに鍵をかけたカレが予想以上に近くて息が止まる。
「ん?」
「あ、……あの。」
「今、何て?」
意地悪な瞳が視線を射止める。
逸らせない、でも、恥ずかしくてたまらない。
「ここは、会社ですか?」
「違いま……。ううん、違う。」
入社したその日から、憧れの先輩だった藤ヶ谷先輩。
ずっと片思いしてた憧れの人。
「違うよね?A。」
わざと、グッと近づいて、俯く私の顔をのぞき込むようにして、名前を呼ぶ。
未だに、信じられない、何で普通すぎる普通な私を好きになってくれたんだろう……。
「A?フフッ」
呼ばれる名前は、確かに私のものなのに、カレの声で呼ばれると特別な音に聴こえるから不思議だ。
「た……、太輔……の、好きなシチュー……、作ろうと思って……。」
好きで、好きで、大好きで、大好きすぎて拗らせた片想いから、憧れの恋人同士になれて1ヶ月。
まだまだ、私の中のカレは、憧れの人だ。
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植尾あい(プロフ) - nanacoさん» んふんふ(//∇//)楽しんでいただけたようでよかったです!こういう雰囲気は、藤ヶ谷くんが似合いますよねぇ。また、イチャイチャするだけのお話を書きたいなーと、思いました! (2020年7月31日 17時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - 甘々藤ヶ谷さん!(//∇//) ごちそうさまでした、最高すぎます…(TT) ありがとうございます(TT) (2020年7月30日 23時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» ナナさん!!!お久しぶりです!お元気でしょうか? そうなんです!星に願いをに続いて、運命なんです!伝わってよかった(^^) 切ないけど幸せな気持ちになってもらえたら嬉しいです。 (2020年5月30日 13時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - あいさんお久しぶりです!!これは運命…と気づいた瞬間に涙が…。心がポッと暖かくなりました!! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 3bad9f733c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» 年下俺様生意気な渉に迫られて、メロメロですよね。年上イメージがある横尾くんですが、こんな関係も時にはありかな?と。楽しんでいただけて良かったです! (2020年5月8日 22時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2018年9月12日 22時