１：ｎの恋愛構図【2】

梅雨《after story of キミ声》4 ページ28

「多分、30分位で効いてくると思うよ。」

「うん。」


サイドテーブルにペットボトルを置くと、そのまま、その手は、私の手を掴んだ。


「ん？」


掴まれた手を見つめると、そっと引き寄せられる。


そして、その長い腕が私の腰に巻き付くように抱き寄せて、私のお腹にゆっくりと額をつけた。





「ねぇ、Aちゃん。」





甘えた声。

ニカの独特な声が甘く囁く。





「薬、効いてくるまで……ギュッてして。」





いつものニカから想像できないそのセリフに、何故か私の方が恥ずかしくなって、頬が熱くなる。


「…………うん。」


ニカの髪を撫でると、「……いたい。」って、小さく呟いて、ゆっくりとベッドに横たわった。

ベッドの横に膝をついて、小さな子供におまじないをするように言った。


「痛いの痛いの飛んで行けー。」


横たわるニカを撫でると、不満顔で睨まれる。


「……子供じゃねぇし。」


弱々しい反論。


「痛いの痛いの……、Aちゃんに移れ……」


そう言って、伸ばされた手は、私の唇に触れる。


「ヤダよ。」


触れた指先を捕まえて、ニカの呪いを断った。


弱々しく向けられる視線を辿るように近づいて、不機嫌に結ばれるニカの唇にキスをする。



「うつったな。ﾌﾌｯ」



唇の端を意地悪に上げて、少しだけ笑う。



「ねぇ、Aちゃん。」



ぼんやりとオレンジ色に染まる部屋。
照らされる私たち。





「……そばにいてね。」





手の甲を額に当てて、目を閉じるキミは、子供みたいなワガママじゃなくて、確かな言葉を私に求める。





「大丈夫。ずっとそばにいるから……。」





窓の外は、雨。


少しだけ、弱いキミ。





何も出来ない私は、ただ、そばにいるから。





キミの痛みを癒せるなら……。





＊ end ＊

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