１：ｎの恋愛構図

好きか嫌いかお気に入り《2》2 ページ27

セットから楽屋へと戻っていく彼らが私の前を通る。


「お疲れ様でした。」


一服しに行ったまま戻ってこない先輩の代わりに、声をかける。


「おつかれー」


仲良く戻っていく姿に、ついて行こうと歩き出すと、急に、グイッと背負っていたリュックを引っ張られて、転びそうになる。


「ギャッ？！」

「マジ？何、今の声。女子とは、思えない。」


おかしな悲鳴を上げた私に、特徴あるハスキーボイスが嫌味を言う。


「ひどっ！二階堂くんのせいでしょ！！てか、７位の人に言われたくないんですけどー。」

「あぁっ？！」

「のぼせて戻ってきて、具合悪いって言ってる彼女に、あれはないわー。」


今日のテーマと順位をほじくり返せば、簡単に挑発に乗る。


「何でだよ？！」

「もっと、優しく介抱してあげなきゃですよ！横尾さんの見て、勉強して下さい。」

「オレの場合は、あれでいいの！」


徐々に、子供のケンカみたいになっていく私たちの言い合いは、もはや恒例行事みたいなもので、誰ひとり、メンバーすら止めに入ってもくれない。


「ニカちゃん可愛いー、なんであれが７位なのかわからないー、って、言ってくれるの！」

「はいはい。そうですね。」


二階堂くんの主張を軽く受け流して、スタジオを出ると、喫煙所でスマホをいじりながら煙草を咥える先輩が見えた。



完全に、サボリっすね。



無意識にため息をつくと、二階堂くんの大きな手が私の頭を捕まえて、ぐりんっと向きを変えさせる。


「いたたたっ！」

「お水持ってきてー。先戻ってるー。」

「……もー。」


無理やり拗られた首を擦りながら、遠ざかる背中に、舌を出す。


もう一度、ため息をついてから、息を吸い込むと、触れられた髪から、微かに二階堂くんの匂いがした。

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