バレンタインデー・イブ《F》3 ページ16
「……遅いって。」
呟くようにそう言った藤ヶ谷くんの声と共に、ぎゅっと抱きしめられる。
「オレの、彼女に、なって下さい。」
奇跡みたいな言葉は、私に向けられていて、3年分の想いが溢れて涙になる。
「……はい。」
断る理由なんて1ミリも見つからない私の返事は、Yesしかないから、そう答えて抱きしめられた胸から顔を上げる。
「よしっ!」
フワリと笑った藤ヶ谷くんの手が、ポンポンと私の頭に触れて、親指で優しく前髪を撫でた。
胸の奥がキュンと音を立てた。
「……じゃあ。」
スッと身体を離して、しゃがみこんだ彼が、横尾くんのロッカーを勝手に開けて、そこから黒いマジックを取り出す。
そして、自分のロッカーの扉に大きく、
『チョコ不要!』
『彼女あり!』
そう書いた!
「えっ?!何やってるの?!」
慌てる私に、キョトンとした藤ヶ谷くんが答える。
「え?だって、彼女いるのに、他の女の子からチョコとかもらえないじゃん?」
サラリと嬉しい言葉を言ってくれる彼が、今、この瞬間から、私の彼氏だってことを実感しながら、でも、言わなければならないことを口にする。
「それ……油性マジックだよ?」
「あっ!あーーーーー!!!」
握ったマジックの『油性』の文字を確認して、声を上げる姿が可笑しくて、つい笑ってしまう。
笑いだしたら止まらなくなって、私につられて笑い出した藤ヶ谷くんが「ま、いっか。」って、言いながら、マジックを横尾くんのロッカーに戻して立ち上がる。
「Aは、そうやって、笑ってて。」
「え?」
「オレの隣で、ずっと、笑ってて。」
そう言った藤ヶ谷くんの表情がすごく幸せそうで、私も幸せな気分になる。
幸せって、伝染するんだね。
「うん。」
とびきりの笑顔で答えると、彼もとびきりの笑顔を返してくれた。
来年も、再来年も、私は、彼に恋をして。
バレンタインが来る度に、この日のことを思い出す。
「藤ヶ谷くんも、ずっと、私の隣で笑っていてね。」
小さな約束。
その笑顔が絶えないように、ギュッと彼の手を握った。
* end *
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植尾あい(プロフ) - はんちゃんさん» ありがとうございます!チャラみつとの約束が果たされたのか、確かに気になりますよね。何万人といるファンから、主人公ちゃんを見つけることができたのか……書いてみたくなりました!リクエストありがとうございます! (2019年2月12日 20時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
はんちゃん(プロフ) - はじめまして。どれも素敵です!!けど、チャラみつの「夜明けのキセキ」1ページにギュッと詰まってますね、1ページですごく惹き付けられました。上手く言えないけど、すごいですね!このエピソードで、話膨らませて続き読ませて欲しいです! (2019年2月10日 1時) (レス) id: 0785dd2a14 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ひよさん» 意地悪な玉森先輩、初めて書いたのでいじわる加減がわからず……でも、キュンとしてもらえてよかったです!卒業シーズンのソワソワと切なさに、自分でもキュンとしました(笑) 初めてTwitterでのメンバー投票だったのですが、私も楽しかったので、また、やります! (2018年3月9日 15時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - hitomin0921さん» 『好きか嫌いか……』シリーズは、メンバーとの距離感が難しくて、でも、切なくてキュンとするシチュエーションで、書いてる私もドキドキしてます(笑) きっと、横尾くんは、起きていたと思いますよねンフフ 他のメンバーも楽しみにしていて下さいね! (2018年3月8日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はぁぁぁぁぁ玉森先輩好きです。玉ちゃんに一票投じたものです。幼なじみのお話だけど今の時期のお話で甘酸っぱくてキュンとしちゃいました。ちょっと続きを妄想しちゃいます! (2018年3月8日 22時) (レス) id: a35722cf0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月16日 22時