１：ｎの恋愛構図

恋人はサンタクロース《2》3 ページ11

｢ほら、急いで！｣


まだ、呼吸が整わない私を急かして、ツリーを背景にして肩を抱くように顔を近づける。

頬に当たるヒゲがくすぐったくて、クスクス笑うと、二階堂くんの手に握られたスマホの画面に映る私たちもクスクス笑う。


長い腕を伸ばして、シャッターを切る瞬間。



サンタクロースが私の頬にキスをした。



｢ちょっ！？｣

｢ｴﾍﾍ サンタだから、大丈夫！｣


慌てる私に、妙に自信満々の二階堂くんが笑って、撮ったばかりの画像を確認する。


｢オッケー、撮れてる！｣

｢うん。じゃあ……｣
｢もう一枚っ！｣


戻ろう。
そう言おうとした私を素早く抱き寄せた二階堂くんが、スマホを持つ手で素早くヒゲをはずすと、驚く私にお構い無しにシャッターを切った。

そして、今度は、画像を確認しないで私の手をとると、｢走れー！｣って、駆け出した。


｢えっ？ちょっと！｣

｢やっべー、超楽しい！｣


何が楽しいのかケラケラ笑いながら走る二階堂くんに、私まで可笑しくなって、２人で笑いながら人ごみを走った。

『今のって、キスマイの……』

そんな声が聞こえたような気がしたけど、私の手を握って走るのは、キスマイの二階堂くんじゃなくて、私の二階堂くん。




そのまま、車に乗り込んで、二人で大笑いしてから、スマホで画像を確認する。

キョトンとする私と、アイドルスマイルの二階堂くんが並ぶ写真に、もう一度爆笑してから、二階堂くんの笑顔をひとり占めして言った。


｢ありがとう。
すっごい楽しかった。｣


きっと、普通のことを、こんなふうに楽しめるのは、彼がアイドルだから。


そうでしょ？





｢メリークリスマス！Aちゃん！｣


ニカサンタがそう言って、私のフードの白いファーに隠れるように、顔を近づけると、優しくて甘いキスをくれた。





Merry X'mas


私の愛しい、サンタクロース。





＊ end ＊

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