ミルクの香り《M》2 ページ23
「Aちゃん、頑張りすぎてない?」
指摘されることが、いつも全部当たっていて、としくんの優しさが心にしみる。
「……そんなことないもん。」
呟くように言い返しちゃうのは、強がりで
「まぁ、そういう所も好きなんだけどね。
それに、気が付かないオレも悪いよね。ごめんね。」
それすら包み込んでくれるとしくんには、かなわないって、思い知らされる。
抱きしめていた手が解けて、私の手から哺乳瓶とスポンジを取り上げると、シンクととしくんの間に私を囲ったまま、なれない手つきで洗い始めた。
「たまには、頼ってよ?」
「うん……、ありがと。」
としくんの優しい温もりに、溜め込んだ涙が溢れてくる。
「頼りないかもしれないけど、こう見えて、Aちゃんの旦那さんなんだよ?オレ。フハハ」
少し照れて笑って誤魔化してるの、知ってるけど、嬉しくて、振り向いてギュッと抱きついた。
「私……、ちゃんと、ママになれてる?……自信ないよ。」
こぼれ出した弱音は、とめどなくて、上手くいかない育児や家事、折れそうな心に、やっと保っている自分が消えそうになる。
「大丈夫。
Aちゃんは、ちゃんとママになってるよ。」
シンクに響く水音が止まって、少し水分の残るとしくんの手が背中を撫でる。
「ミルク育児だって、いいことあるよ?」
「……たとえば?」
「パパも、赤ちゃんが一生懸命ミルク飲んでる可愛い顔が見られるし。その時間、Aちゃんに休んでもらえるでしょ?」
どこまでも優しくて、前向きで、温かい。
「としくんのお嫁さんになれて、よかった……」
その胸に頬をすり寄せると、暖かな手がそっと髪を撫でてくれる。
「オレも……Aちゃんが奥さんでよかった。」
額に優しく唇が触れて、指先が耳元を撫でる。
それは、キスの合図。
頬にかかった髪を、としくんの指先が掬うように耳にかけて、その唇が近づいた。
「……大好きだよ。」
触れる前にそう言ったとしくんの声が心地よくて、そっと目を閉じれば、温かな唇が触れた。
*end*
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植尾あい(プロフ) - はんちゃんさん» ありがとうございます!チャラみつとの約束が果たされたのか、確かに気になりますよね。何万人といるファンから、主人公ちゃんを見つけることができたのか……書いてみたくなりました!リクエストありがとうございます! (2019年2月12日 20時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
はんちゃん(プロフ) - はじめまして。どれも素敵です!!けど、チャラみつの「夜明けのキセキ」1ページにギュッと詰まってますね、1ページですごく惹き付けられました。上手く言えないけど、すごいですね!このエピソードで、話膨らませて続き読ませて欲しいです! (2019年2月10日 1時) (レス) id: 0785dd2a14 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ひよさん» 意地悪な玉森先輩、初めて書いたのでいじわる加減がわからず……でも、キュンとしてもらえてよかったです!卒業シーズンのソワソワと切なさに、自分でもキュンとしました(笑) 初めてTwitterでのメンバー投票だったのですが、私も楽しかったので、また、やります! (2018年3月9日 15時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - hitomin0921さん» 『好きか嫌いか……』シリーズは、メンバーとの距離感が難しくて、でも、切なくてキュンとするシチュエーションで、書いてる私もドキドキしてます(笑) きっと、横尾くんは、起きていたと思いますよねンフフ 他のメンバーも楽しみにしていて下さいね! (2018年3月8日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - はぁぁぁぁぁ玉森先輩好きです。玉ちゃんに一票投じたものです。幼なじみのお話だけど今の時期のお話で甘酸っぱくてキュンとしちゃいました。ちょっと続きを妄想しちゃいます! (2018年3月8日 22時) (レス) id: a35722cf0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月16日 22時