キミのその手を その声を 【9】

重なる想い ページ16

不自然に片腕だけを通したTシャツを胸に抱きしめたまま、ニカの瞳に捕われる。


ダメ……、もう。


早まる鼓動に合わせて、頬が熱くなっていく。


「……Aちゃん。」


切なげな眼差しで見上げてくるニカに、愛しさが溢れる。



どうしようもなく、ニカが好きだ。

ニカが口にしない、その不安ごと、全部。



大きくて温かな手が優しく腰に回って、ベッドに座るニカの元へと引き寄せられる。

もう、無駄な言い訳も強がりも、何ひとつ出てこなくなって、キュッと唇を噤んだ。



許してもらえなくても、
私たちの今は、ココにある。



この恋が最後の恋になればいい。



手放せない想いは、ゆっくりと私たちを変えていく。




きっと、これからも……




開いた長い足の、その小さくて丸い膝の間へ収まると、ニカが目を細めた。





「やっと……、オレだけ見てる。」





ニカの言葉に、胸が痛くなった。



会えなくて、

切なくて、

募らせた不安や、

見えない未来。



その全ては、離れていた時間に、ニカも私も同じだけ苦しめていたんだ。


「……ごめん、ニカ。」

「何謝ってんの？」


苦しくなる胸の奥から、ごちゃまぜの感情が押し寄せる。


「わかんな……い。」

「なんだ、それ？ﾌﾌｯ」

「ただ……。」


優しく笑うニカに、今、伝える言葉は、





「……大好きだよ。」





それだけ。


一瞬、驚いたように揺れた瞳。

それから、泣きそうに眉をひそめた。


腰に回されていた手が背中へと伸びて、まだ、しっとりと濡れているニカの髪がお腹に触れたかと思うと、小さな子供みたいに私に抱きついた。


「……ニカ？」


不安になって、その表情を覗き込むようにして呼んでみる。


「ニカ？え？どうし……キャァ！」


不意打ち。


急に立ち上がったニカが、背中に回る手で私を抱きしめたかと思うと、そのまま、ベッドの上へと押し倒した。


「なっ……」


目が回りそうな勢いで、頭の中と心の中がグルグルする。




「もーーーーー！無理っ！」




顔の横に両手をついて、真上から私を見下ろすニカがそう言ったかと思うと、

倒された勢いで顔に掛かった髪を、長い指で掬うように払って、



その柔らかな唇を押し当てた。



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