キミのその手を その声を 【9】

キミの名前 ページ12

「ジャムくれた横尾さん。」


すぐ隣で髪を拭いているニカを無視するように、開いた雑誌に指をさす。


「玉森くん。私、ドラマとかみてたよ。」

「ふーん。」


少しそっけないニカの返事。


「藤ヶ谷さんと一緒に出てたやつ。」


タオルの擦れる音とシャンプーの匂い。


「宮田くんと千賀くん。」


明るい髪色の笑顔が可愛い二人を指さすと、ニカが少し笑って


「勉強したの？」


って、言った。


「ファンになったの。」


言い返してから、少し恥ずかしくなって、からかわれる前に指を進めた。


「北山さん。」


二度も直接会ったのに、どちらの北山さんとも違う顔をする北山さんの表情に切なくなる。

本当の北山さんを知っている人が、どこかにいるんだよね……。


「ねぇ、Aちゃんって、ミツと同じ年じゃない？」

「え？あ、そうだね。」


小さく書かれたプロフィールで知る、北山さんのこと。


そして、気がつく。


「ねぇ、ニカの誕生日、教えて？」

「は？」

「教えて？」


突然のことにキョトンとするニカに、もう一度、言う。


「そこに、書いてあ……
「ニカから聞きたいのっ。」


ニカが指をさそうとする部分を隠すように掌で押さえて、目を合わす。


一瞬の沈黙。


それから、ニカが教えてくれる。


「8月6日。」

「そっか。……まだ、先だね。」


それだけ返して、雑誌から手を離す。


にかいどう たかし
東京都出身
1990年8月6日 生まれ


ここに書かれたプロフィールは、二階堂くんのものだから。


私が知りたかったのは、ニカの誕生日。


心の中で読み上げた二階堂くんのプロフィールの上をニカの指が通り過ぎて、誰よりもはしゃぐように大きな口を開けて、両手を広げる二階堂くんを指した。


「じゃ、この子は？」

「え？」

「１番カッコよくて、Aちゃんが好きなこの人の名前は？」


ニヤニヤする口を隠しきれていないニカが、唇を噤んで、私の反応を楽しんでる。



そうだよ。

私が１番大好きな人。



「…………二階堂くん。」

「ﾝﾌﾌ 合格です！」


頼んでもないのに合格を言い渡され、ぐしゃぐしゃに髪を撫で回される。


「やーめーてっ！」


ニカの手首を掴めば、そこには、ブレスレットが揺れていて、ここにいるニカを実感させてくれる。


そして、今更、気になるニカの格好。


「ちょっ……、寒くない？なんで、タンクトップ？」

「Aちゃんが、パーカー着てるからだろっ！」

アウト→←恋、恋、恋

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す