祈り ページ41
「………ニカ。」
寝室に戻ると、ベッドに巨大な犬がいた。
ぬくぬくとすっぽり頭まで毛布を被って、その隙間から上目づかいで私を見上げる。
「……何やってんの?」
「ベッド温めてるっ!Aちゃん寒かったんでしょ?」
「もう……… フフッ」
その発想力に、呆れながらも笑いがこみ上げる。
本当に大きな犬みたい。
ベッドの脇に立って、モゾモゾと動く毛布を見ていると、顔を出したニカがにぃっと笑って、毛布の端から腕を伸ばして私の手首を掴んだ。
「温まったよ。」
手首を掴むニカの手も十分に温かくて、私の体温を上げていく。
その手首に揺れるブレスレット。
まだ、私の手には、リードの感触。
『できるだけ長いリード』
そう言われたことを思い出す。
ニカに繋がるリードは、どれだけの長さがあれば足りるかな?
一度、離れてしまったら、もう、その先がどこに繋がっているのか、本当に繋がっているのかすらわからないほどの長さが必要な気がしてしまう。
そして、そんなに長いリードは、途中で絡まり、ひっかかって、両端に繋がる私たちを苦しめる。
無理に解こうとすれば余計に絡まり、無理に引っ張れば切れてしまう。
それなら、初めからリードなんてつけなければいい。
たどり着く先は、やっぱりそこで、決めなければいけないのに決められない自分の心に苛立つ。
「………おいでよ。」
優しく引かれる手首に、ベッドの端へ膝をつくと、毛布の中の仔犬が毛布を捲る。
捲られた毛布の中から仔犬のぬくもりが放たれ、私の体を通り抜けてく。
そして、毛布の中には、仔犬の魔法が解けたニカが、切なげな笑顔で私を見上げて手を引く。
「あったかい空気、……逃げちゃう。」
そう言うと、滑らかに伸びる腕が私の腰に回って、そのまま、ベッドへと引き込まれた。
「ねぇ、ニカ?」
「ん?」
ニカの体温で温まった毛布の中で、ニカの腕に包まれる。
「私が……ニカを、ギュッてしてあげるよ。」
「え?………逆でしょ?」
ニカの背中に腕を伸ばす。
小さな世界で、私たち二人は、お互いのことだけを想って、抱きしめ合う。
どうか、
キミが幸せでありますように。
自分の幸せなんて祈らない。
ただ、キミが笑顔でいられるように。
それだけを祈るよ。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時