変わる季節 ページ4
スマホをカウンターに戻そうとした瞬間、画面に真紀からのメッセージが表示された。
− ごめん。電車が遅れてて、少し遅れる
− 了解
電車の遅延なんてよくあることだし、仕方のないこと。なのに、それをキチンと連絡して謝ってくれる真紀の性格が私は好きだ。
− A、今、何してる?
− すき焼きの準備だよ
− そうだよね
脈絡もなく切り替わった真紀の会話に、微かな違和感を覚えたものの、一緒に送られてきたおかしなキャラクターが舌を出すスタンプに吹き出して紛れてしまう。
− 今から会場セッティング!
真紀に送信して、スマホを置いた。
カウンターに寄りかかってリビングを見渡す。
「取り合えず……ちゃぶ台!」
いつもの小さめのローテーブルを片付ける。
お正月、ニカと真紀が初めて会ったときのことを思い出して、少しおかしくなる。
真紀に怯えるニカと、ニカをこき使う真紀。
そして、すぐに意気投合して、矛先は私に向かって、気の抜けない時間だった。それでも、大切な二人が仲良くしてくれることが嬉しかった。
足を畳んだローテーブルを持って、サービスルームへ向かう。
もう、この部屋を開けることも怖くない。
ただ………
そこには、まだ、あのソファーがあった。
処分するのを躊躇っている訳ではなく、ただ、単純にその時間がなかっただけ。
手放す覚悟は、できていた。
ローテーブルを部屋の隅に置くと、折り畳み式の木製ローテーブルを引っ張り出す。
「よいしょっ!」
少し重いローテーブルを持ち上げて、部屋の外に運び出そうとすると、視界の端に春夏用のラグが入った。
ローテーブルを廊下に出してから、サラリとした肌触りの綿のラグも運び出す。
開けっぱなしのリビングのドアの向こうに見える、毛足の長いラグが暑苦しく見えてきた。
「春だ。春。」
ニカと会えなかった数週間の間に、季節は、次へと進んでいた。
私の隣に、ニカがいる季節。
そして、私の部屋の些細な変化に、ニカが気づいてくれるのか。
考えるだけで、心が弾んだ。
多少手こずりながら冬用のラグを丸めて、サービスルームへ片付けると、フローリングの床が広がるリビングに掃除機を持って立った。
「よし!やるぞ!」
気合いを入れて、掃除機のスイッチを入れた。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時