捕らわれた感覚 ページ17
バスタブの縁に座ってシャワーを出す。
床で跳ねる水しぶきが足に当たって爪先を冷やした。
私、靴下も履かないで、出ていったんだ……。
今さらそんなことに気づいて可笑しくなる。
「何笑ってるの?」
一人でニヤつく私に、バスルームのドアに手を掛けて見下ろすニカが不審そうな目を向ける。
「だって、裸足だよ?
私、たぶん、仕事から帰ってきて、洋服着替えた時からずっと。」
「それが可笑しいの?」
訳がわからない顔をしたニカが口をへの字にして、私のニヤつく理由を探ってる。
「可笑しいじゃん。」
お湯が出始めたシャワーを手にとって自分の足に掛けていく。
ボディーソープのポンプを押すと、湯気が立ちはじめたバスルームにその香りが広がった。
「裸足だってことにも気づかなかったんだよ……。」
ゆっくりと足を撫でて、泡が広がるのを見ながら言った。
「裸足のまま、スニーカー履いて、真紀に留守番押し付けて………。」
数時間の間に起こった出来事がニカに対する感覚を変えていく。
目の前にいるニカは、いつものニカなのに、何も変わらないのに、私の感覚だけがずれていく。
ニカの肩越しに、無数の光を見てしまったから。
シャワーで泡を流して呟く。
「私、………必死だね。」
排水溝に吸い込まれていく泡を視点を定めずに見送る。
「はい。タオル。」
ニカの声に顔をあげると、当たり前のようにタオルを収納している棚から取り出して広げてくれる。
そんな些細なことにすら、申し訳なさを感じてしまうから、やっぱり、私は、もう、ニカの思うような私ではいられないんだって思う。
ニカが怖がって、不安だったのは、こうなることだってわかってるのに………。
「ありがとう。」
タオルを受け取って足を拭いている間、ニカは、何も言わずに私を見ていた。
「本当は、すき焼きの準備、出来てるんだ……。」
タオルをランドリーバスケットに入れて振り向くと、何も言わないニカが私の手を繋いだ。
それは、
わずかな時間を惜しむように。
わずかな隙間を惜しむように。
私たちの距離がこれ以上離れないようにと、ニカが私に伝えてくれる言葉にできない想いのようで、その手をギュッと握り返した。
まだ、このリードの先に、ニカがいる?
まだ、このリードを離さないでいい?
私の我儘は、許されるものではないことなんて、わかってるのに、離すことができないよ………。
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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時