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本心 ページ2

「すみません。それじゃあ、お先に失礼します。」


チャイムと共に、社員食堂やランチへ向かう社員の流れに声をかける。



「森田さんが半休なんて、めずらしいっすね。」



パソコンを閉じて、帰り支度をしている私に、自分のデスクでコンビニのお弁当を広げる伊藤くんが声をかけてくる。



「うん………、ちょっとね。」



今日は、超久しぶりに彼氏が家にきて、すき焼きやるの。
その準備の為に、午後は、半休!


って、言ってやりたい気持ちを抑えて、伊藤くんの言葉を曖昧に受け流すと、パチンと割り箸を割って、お弁当のハンバーグに取り掛かった伊藤くんが悪気もなさげにサラリと言う。



「金曜日だし、デートですか?」


「はい。アウトー。セクハラ発言。」


「えっ?ダメなの?話の流れじゃないですかー。」


「世の中、厳しくなったよね。じゃ、コピー用紙の補充よろしく。お先に。」



身の回りを確認して、カバンを持つと、不服な声をあげる後輩に手を振ってエレベーターホールへと向かった。


オフィスを出ると、徐々に春に近づく季節が街路樹の桜に、淡く色づく蕾を持たせ、冬とは違う柔らかな風を巡らせた。


慌ただしく行き交う車と、短い昼休みに歩調を速めて歩く人達を横目に、うーんと伸びをすると駅へ向かって歩き出した。





・・・・・





いつもはほとんど寄らないお高めのスーパーに寄って買い物を済ませて家につく頃には、残してきた仕事のことなんて頭の隅にもなくなっていた。


食材を冷蔵庫に入れてから、一緒に買ってきたベーグルサンドを持って、この後ニカが我が物顔で座るであろうクッションに座った。

大分遅くなってしまった昼食にかぶり付きながらスマホを取り出すと、真紀からメッセージが届いていた。



− 今からデザート買って、Aの家に向かいます



今日も真紀はデザート係り。
フットワーク軽く、話題のスイーツを求めて何処へでも出かけてくれる真紀のデザートに期待が高まる。



− 了解です。何時頃着く?



私の送ったメッセージは、瞬時に既読となって返事が返ってきた。



− 4時頃かな



時計を確認してから、もう一度スマホにメッセージを入力する。



− おいしいご飯作って待ってるよ



送信しても、なかなか既読にならない送信相手は、『ニカ』。

既読にならないことを確認してから、続きを送信する。



− 早く ニカに会いたい



これが、送りたかった本心。

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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時

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