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ごめんの意味 ページ7

力の入らない指先から血の気が引いていく。


違う、違う、違う………。
あれは、ニカじゃない。


だって、ニカは、


生意気で

図々しくて

無邪気の塊で

好き嫌いいっぱいで

我儘で

優しくて

心配性で

自分勝手で

意地悪で

寂しがりやで



可愛い 可愛い 私のペットで




雨の日に拾った 私の仔犬で





臆病な私が 恋した人





冷たくなる指先をキュッと握って、寝室へ入るとパーカーを羽織る。
帰ってきた時に置いた状態のままになっている仕事用のカバンから財布と鍵を取り出してポケットへ詰め込む。



頭の中で、何度もリピートされる映像と、断片的に残るフレーズ。



寝室のドアへと向かって振り返らずに進んだ。




この部屋にニカがいた。

あの夜、確かに、いたんだ。



抱きしめてくれた体温を忘れたりしない。




忘れたりしていないのに、もう、二度と手に入れられない温度だと気づく。




零れそうになる涙を飲み込み、つけっぱなしのテレビを消すことなくリビングを通り抜け、玄関へ辿り着く。

スニーカーに無理矢理足をねじ込み、ポケットの鍵を探りながら、勢いよくドアを開いた。



「うわぁっ!……っと。」



突然開いたドアをギリギリでかわして、落としそうになった荷物を抱き止めた姿勢でそこに立つのは、大親友。



「あ………真紀。」


「真紀……じゃ、ないよ。もぉー。」



そう言って、大袈裟に頬を膨らます真紀の手が、ドアノブに掛かったままの私の手に重なって、ギュッと握った。



「エントランスは、他の住民の方と然り気無く入ってきちゃった。フフッ」



いたずらっ子みたいに笑う真紀が、何処か不自然な視線を私に向ける。



「でも、インターフォン何回鳴らしても反応ないから、中で倒れてるんじゃないかって、心配しちゃったよ………。」


「ご……めん。気づかなかった……。」



突然突き付けられた現実に、どれだけの時間が過ぎていたのかわからない。

私の手を握る真紀の手に力が入る。


開け放たれたリビングのドアの向こうから、微かに聞こえるテレビの音。


真紀が私の目を覗き込むようにして、視線を合わせると、切ないような、悔しいような、複雑な表情を浮かべて言った。






「ごめん……A。
もっと、早く来てあげればよかった……。」






真紀は、何も悪くない。



それなのに、謝るってことは、真紀は、全てを知ってたってこと。






そして、全てが夢じゃないってこと。

リードの向こう→←突き付けられた現実



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植尾あい(プロフ) - 千明さん» if聞きながら?!私、自分の書いた妄想のくせに、それやると悲しくて涙ぐむんですよ……どうかしてる。祈りも最近やばいです。シーンタイトルにしちゃいました……切なくて苦しい展開ですが、この先の二人信じて見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ゆうさん» お久しぶりです!もう、ウタゲ終わってキスブサもおやすみで、本当にニカ不足(・_・、) あ、でも、プレバトは、可愛かった!お話の方は、切ない展開ですが、リアル二階堂くんに癒やされながらがんばります! (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - 由夏さん» ありがとう(ノД`)でも、ちょっと切なすぎる展開。二人が強く心を繋いでいてくれると信じて、書き続けます。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - amiさん» お久しぶりです(*´∀`*)ノamiさん。切ないけれど、お互いを求め、思いやる気持ちが伝わっていたら嬉しいです。思いやるあまりに少しずつズレてしまった思いが、この先、どうなっていくのか見守って下さいね。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - chizuruさん» 秋の夜長のお供になれたでしょうか?こんな切ないシーンお供にしてもいいのかなぁ。でも、そう言ってもらえて嬉しい。そして、どこか当てはまる歌詞が切なさの中に温かさを感じさせてくれる。 (2015年10月7日 8時) (レス) id: bb151ab1c7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年7月23日 7時

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