キミのその手を その声を 【2】

親友の言葉 ページ33

ニカが戻ってくるまでの短い時間、真紀と二人で早口に喋り続ける。

今日の話題の中心になるはずの人物が、まさかのご本人登場となってしまったから仕方がない。


待っててと言われたトマト鍋に火を入れて、真紀が持ってきてくれたシャンパンを開ける。



「お正月だし、奮発しちゃった。」



そこそこ値の張るシャンパンを二人分のグラスに注ぐと乾杯した。



「お昼からシャンパンなんて、贅沢だね。」


「そうだね、これぞ、お正月の醍醐味。」



顔を見合わせて同時に笑う。
お酒は好きだけど、強い訳じゃない私たち。それがわかってるから、ボトルは小さめ。



「いやいや…しかし、まさかね……。」



真紀がニヤニヤしながら、グラスを傾ける。



「ﾌﾌｯ… いいもの見させてもらったわ〜。」


「なっ…なんのこと？」



玄関先で真紀とニカと鉢合わせた瞬間を思い出す。

確かに、あの瞬間を切り取られたら、シチュエーション的にヤバイのは、わかってる。



「ﾝﾌｯ……ラブラブじゃん。A、メッチャ幸せそうな顔してたからね。」


「やめてよっ、もう……恥ずかしい…。」



からかう真紀の言葉に頬があつくなって、片手で扇ぐ仕草をする。

すると、優しく微笑んだ真紀が真っ直ぐに私に言った。



「でも、私、嬉しかった。」


「……… え？」


「Aが、また、ちゃんと恋してて。」



真紀の言葉が嬉しくて、少し恥ずかしくて、どんな顔したらいいのかわからないでいると、真紀が私の肩をポンっと叩いて、頑張れっ！てガッツポーズした。



「お……おうっ！」



ガッツポーズで応えると、少し眉を下げた真紀がポツリと呟いた。



「……… これから、大変なこと多そうだけどね。あの子。」


「ん？どういうこと？」



意味深なニュアンスに少し不安になる。



「大丈夫。協力するってこと。」


「うん。ありがとう。」



力強く言ってくれる真紀にあやふやに頷く。


ニカに気になることあったのかな…？


親友の目線で見るニカの姿が、一体、どんな風に映ったのか気になったけれど、その話題に移る前に、玄関からニカの声が響いた。



「ちょっと！Aちゃん、玄関の鍵、開けっ放しだったよっ！
ちゃんと閉めてっていつも言ってるじゃんっ！」



そう言いながら、着替えたニカがリビングに現れた。

その姿が何故か可笑しくて、私と真紀は、大笑いで迎えた。

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