プレゼントの行方 ページ23
ニカの部屋の前に立つと、紙袋をそっとドアノブに引っかけた。
「これでよしっ。」
渡せないと思った。
渡したいと思った。
諦めかけた。
それでも、こうして行動したことに、少しずつでも前に進んでいるのを感じて、くすぐったい気持ちになる。
「……受け取ってくれますように。」
ほんの少しの不安を拭うように、ドアノブをギュッと握った。
そこに、ニカの温もりはないけど、今夜、ニカが帰ってきたら、真っ先に触るはずのドアノブに願いをかけた。
・・・
クリスマスイブが明けて、朝がくれば、社会人の私にとっては、なにも変わらない一日が始まる。
イブの夜を一緒に過ごす相手がいれば、目を覚ますと隣には愛しい寝顔……なんて幸せな朝なのかもしれないけれど、残念ながら、私の隣には、アラーム音を響かせるスマホがあるだけだった。
「うるさっ……。」
自分でセットしたアラームに文句を言って止めると、寝室を見渡す。
「…… サンタさんは、今年も来なかったか。いい子にしてるのになぁ…。」
当たり前のことをボヤきながら冷えた洗面所へ向かう。
結局、昨日の夜、ニカが帰ってきたのかはわからない。
ベットに入って耳を済ませて、もしかしたら、帰宅した気配を感じるかもしれないなんて、都合よく考えていたら、すっかり眠りについていた。
身支度を整え、軽く朝食を済ませる。
気持ちを仕事モードに切り替え、ヒールを履いて背筋を伸ばす。
「よしっ。」
ドアを開けて、冷たい空気の中へ踏み出す。
いつもと変わらない朝。
鍵をしめて、おそるおそるとニカの部屋のドアノブを見る。
私が引っかけた紙袋は、
姿を消していた。
「…… よかったぁ。」
安堵のため息が漏れる。
そして、ジワジワと込み上げてくる幸せ。
にやける顔をなんとか抑えて、駅への道のりを足取り軽く進んだ。
ニカ、どんな顔したかな?
そんな想像しながらの通勤は、いつもより数倍楽しかった。
会社のデスクに着いて、真っ先にしたのは、真紀への報告。
― プレゼントは、なんとか渡せたよ。
送ったメッセージは、すぐに既読となり、返信があった。
― よくできました。
優しい真紀の言葉に一人微笑んで、仕事に取り掛かった。
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植尾あい(プロフ) - ちいさん» 生き甲斐だなんてっ!感激です。『欲張り』のあのシーンは、書き始めた時から、絶対に書く!と、決まってたシーンなので気に入って貰えて嬉しいです!仔犬感と大人感のバランス、うまくとりながら、日々、妄想に励みますっ(笑) (2015年3月2日 11時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 作者様の作品を読むのが最近わたしの生き甲斐レベルです( ; ; )もう仔犬なのか立派な男なのかわからない魅力的すぎる隣人ニカちゃんに毎日萌えています//私も欲張りのあのシーンたまらなく好きです!溢れ出す妄想、これからも楽しみに読ませていただきますね! (2015年3月2日 2時) (レス) id: 7ce2ec877c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - aiMyuさん» 通勤のお供になれて光栄です!私的に朝が都合よくて、朝更新してますが…そうですか、不審者(笑)これは、大人な展開は、避けた方がよさそうですね。朝からねぇフフッ。帰宅後に読み返して貰えるなんて!ありがとう。これからもよろしくお願いします! (2015年2月26日 20時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
aiMyu(プロフ) - コメ返しwwあの、あいさんて朝更新してるじゃないですか?私、通勤中に読むんですよね。毎朝、電車内でフゥーって息吐きながら、ニヤニヤしちゃって…私、完全に不審者ですwwそして帰宅してから読み返す♪♪本当に尊敬してます☆ (2015年2月26日 15時) (レス) id: 81939e753e (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - キスマイさん» ハイハイ♪いらっしゃーい(笑)自分でももどかしくなりながら書いてます。でも、皆さんにキュンしてもらえて頑張れます!仕事バラしはねぇ……ウフフ…お楽しみに♪いつでもお喋りしに来て下さいね♪お待ちしてまーす。 (2015年2月26日 8時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2015年1月19日 8時