秘密の部屋 ページ17
私の部屋の重かった空気をすっかり入れ替えたニカが立ち上がる。
「そろそろ、帰るね。明日、朝、早かったんだわ。」
「そっか。」
そう言って、リビングを後にするニカに『仕事？』と、聞かないのは、私のルール。
そこまで、踏み込めないのが私たちの関係。
「たい焼き美味しかった。また、買ってきて。」
「やだよ。メッチャ並ぶんだもん。」
「ケチ。」
「Aちゃんが並んでよ。」
「やだよ。寒いし。」
「ひっでぇ。」
何気ない会話。
からかい合う距離。
もっと、続けばいいのに。
ニカとの距離が近づくほどに、求めるものが大きくなる。
そして、失い、一人になる恐怖がつきまとう。
「そういえばさ。Aちゃん、この部屋は、何に使ってる？」
玄関脇の閉じられた部屋のドアノブにニカの手が掛かる。
「開けないでっ！」
思わず出た大声に、ニカが固まる。
自分でも驚くほどの大声。
「……… あっ、ごめん。」
ドアノブから手を離したニカが、一歩下がる。
「あっ……あのっ、物置に使ってて…。
中、ぐちゃぐちゃだからさ。ﾊﾊｯ
恥ずかしいじゃん。」
取り繕うように言ってみたけど、上手く笑えない。
「オレも今のところ物置。引っ越してきた時のダンボール箱、まだ、開けてないのとか置いてるし。」
「そろそろ、片付けた方がいいでしょ……。」
「別に不便じゃないし。必要な時に、ダンボールから探せばいいだけだし。その方がリビング広く使えてるし。逆にね。」
そう言って、悪気なく笑う。
「まぁ……確かに。メインに使う部屋を健全に保つために、必要な部屋かもね。」
物置と称したサービスルーム。
三畳ほどのその空間に詰め込まれた見たくない物。
でも、捨てられないもの。
今は、まだ、ニカには、言えない。
「じゃあね。また、来るね。」
「……… ええぇ〜。」
わざとらしく不満そうな声を出す。
「うわっ。もう、何っ？
さっきまでと違いすぎる反応。
ツンデレ？あれ？逆？デレツン？」
一人でアレコレ言ってるニカの姿が可愛すぎる。
「ウソだよ。また、鍋やろうよ。」
「……… やっぱり、ツンデレか。ﾌﾌｯ」
靴を履いて、玄関に立つニカを見るのは３回目。
距離が近づくほどに、この瞬間が辛くなる。
「じゃあね。ちゃんと鍵閉めなよ。」
「うん。」
そう言って出ていったニカは、私が鍵を閉めるのを確認してから、ドアの向こうを離れていった。
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植尾あい(プロフ) - ちいさん» 生き甲斐だなんてっ！感激です。『欲張り』のあのシーンは、書き始めた時から、絶対に書く！と、決まってたシーンなので気に入って貰えて嬉しいです！仔犬感と大人感のバランス、うまくとりながら、日々、妄想に励みますっ(笑) (2015年3月2日 11時) (
レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 作者様の作品を読むのが最近わたしの生き甲斐レベルです（ ; ; ）もう仔犬なのか立派な男なのかわからない魅力的すぎる隣人ニカちゃんに毎日萌えています//私も欲張りのあのシーンたまらなく好きです！溢れ出す妄想、これからも楽しみに読ませていただきますね！ (2015年3月2日 2時) (レス) id: 7ce2ec877c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - aiMyuさん» 通勤のお供になれて光栄です！私的に朝が都合よくて、朝更新してますが…そうですか、不審者(笑)これは、大人な展開は、避けた方がよさそうですね。朝からねぇﾌﾌｯ。帰宅後に読み返して貰えるなんて！ありがとう。これからもよろしくお願いします！ (2015年2月26日 20時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
aiMyu(プロフ) - コメ返しwwあの、あいさんて朝更新してるじゃないですか？私、通勤中に読むんですよね。毎朝、電車内でフゥーって息吐きながら、ニヤニヤしちゃって…私、完全に不審者ですwwそして帰宅してから読み返す♪♪本当に尊敬してます☆ (2015年2月26日 15時) (レス) id: 81939e753e (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - キスマイさん» ハイハイ♪いらっしゃーい(笑)自分でももどかしくなりながら書いてます。でも、皆さんにキュンしてもらえて頑張れます！仕事バラしはねぇ……ｳﾌﾌ…お楽しみに♪いつでもお喋りしに来て下さいね♪お待ちしてまーす。 (2015年2月26日 8時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2015年1月19日 8時
