キミのその手を その声を 【2】

つながる ページ16

「よしっ！スマホ出して。」



何かを決意したようにそう言ったニカが、自分のスマホを取り出しながら、私のスマホを要求した。



「何？どうしたの？」


「オレのご主人様、ほっといたら一人で何しでかすかわかんないから。」


「はぁ？」


「はーやーくーっ！」



半ばニカの強引さに押しきられるように、自分のスマホを差し出す。



「オレの連絡先。」


「……… えっ？」


「登録してっ。」


「あ………うん。」



どういう流れなのかは、ニカにしかわからないけど、私のスマホに『ニカ』が仲間入りした。



「これで、オレに連絡出来るようになったんだから………。」



その先を口にする前、一瞬、真剣なニカの眼差しが私を捉えた。

それは、瞬きをしていたら見逃すほどの一瞬。






「……… 一人で泣いたりしないで。」






「え………。」



こんな風に言ってもらえるとは、思ってなかった。



ニカ、いつから気づいてたの？


髪に触れた時？


部屋に入ってきた時？


インターフォン越しに話した時？



遡るわずかな時間。



「隠そうとしても無駄だから。
オレ、空気読める子だしっ。
ご主人様の変化には、敏感だしっ。」



強がりな私に無理強いするわけではなく、ニカの優しさがそうさせる。


ふざけたように並べられた台詞は、ニカの照れ隠し。



こんな私を心配してくれるの？



「優秀なペットだね……。」


「でしょ？
エサは、奮発したほうがいいよ。」


「そうだね。」


「はいっ。Aちゃんのも教えて。」


「あ……うん。悪用しないでね。」


「しねぇしっ！」



私の名前がニカのスマホに登録されるのが、なんだか照れくさくて、ちょっとからかう。


こうやって、少しずつ、変わっていけたら、いつか伝えられるかな。




昨日までとは違う距離。



知ってしまった、ニカの温もり。



抱きしめられた腕。



髪に触れた指。



切ない表情。



ニカの匂い。



優しい声。




ニカの全部が私の心を癒してくれる。



恋する気持ちを思い出させてくれる。

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