触れる指先 ページ15
「今、そういうこと言うタイミングだった？」
私から視線をそらして、ニカが言う。
「だって、今、言わなかったら、もう絶対に言えない気がしたから。」
「それにしても、いきなりだったよ。あー、びっくりした……。」
こんなに素直に自分の想いを口にしたのは、久しぶり。
大人だから仕方ないけど、やっぱり、我慢して生きているのが日常で、私みたいな面倒な性格だと、強がりばかりか前に出て、本当の自分が埋もれてしまう。
「でも ……役目は、果たせたってことだね。」
ハニカミながら真面目に言って、私の様子を伺うニカ。
「もちろんだよ。」
ゆっくりともう一度、ニカの髪に触れる。
今度は、「やめろっ」なんて言わないで、フワリと笑っておとなしく撫でられるまま。
このニカの作り出す、優しい空気が癒しの源。
「かわいいね……ニカ。」
「はぁ？」
ちょっとだけ不満そうに口を尖らせたけど、それでも、空気は変わらない。
私の手に触れる髪も離れてはいかない。
手のひらに伝わる、ニカの温もり。
「来てくれて、よかった……。」
きっと、一人でいたら、また、自分を責めた。
そして、追い詰めた。
真紀の言葉も、ニカとの出会いも無駄にした。
ニカは、何も言わないけど、私の言葉を聞いてくれてる。
「ニカがいてくれて、よかった……。」
ゆっくりと髪を撫でる手を止めて、ニカと視線を合わせると、ニカの手が私の手に重なり、ゆっくりとテーブルに下ろした。
「Aちゃん……。」
ニカの手が伸びる先は、私の髪。
さっきまで私がしてたように、大きな手で私の髪を撫でた。
細く長い指が髪に絡まり、ほどけていく。
心地よい感覚。
時々、耳に触れる指先にドキドキする。
始めたばかりの恋は、スピードを上げて、私の心をいっぱいにしていく。
「撫でられるのもいいもんだね。」
「でしょ。」
「ペットになるのもいいかもね。」
「あ、それは、だめ。」
「なんで？」
私を撫でる手を止めることなく、ニカが答える。
「なんでって……。
Aちゃんには、オレがいるでしょっ！」
「………… ん？」
「オレ、やだよ。ペットにペット扱いされるの。」
そう言って、大きな口、ニーーッて笑う。
「オレが撫でてあげるよ。」
私の心を惹き付けて離さない、その手で。
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植尾あい(プロフ) - ちいさん» 生き甲斐だなんてっ！感激です。『欲張り』のあのシーンは、書き始めた時から、絶対に書く！と、決まってたシーンなので気に入って貰えて嬉しいです！仔犬感と大人感のバランス、うまくとりながら、日々、妄想に励みますっ(笑) (2015年3月2日 11時) (
レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - 作者様の作品を読むのが最近わたしの生き甲斐レベルです（ ; ; ）もう仔犬なのか立派な男なのかわからない魅力的すぎる隣人ニカちゃんに毎日萌えています//私も欲張りのあのシーンたまらなく好きです！溢れ出す妄想、これからも楽しみに読ませていただきますね！ (2015年3月2日 2時) (レス) id: 7ce2ec877c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - aiMyuさん» 通勤のお供になれて光栄です！私的に朝が都合よくて、朝更新してますが…そうですか、不審者(笑)これは、大人な展開は、避けた方がよさそうですね。朝からねぇﾌﾌｯ。帰宅後に読み返して貰えるなんて！ありがとう。これからもよろしくお願いします！ (2015年2月26日 20時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
aiMyu(プロフ) - コメ返しwwあの、あいさんて朝更新してるじゃないですか？私、通勤中に読むんですよね。毎朝、電車内でフゥーって息吐きながら、ニヤニヤしちゃって…私、完全に不審者ですwwそして帰宅してから読み返す♪♪本当に尊敬してます☆ (2015年2月26日 15時) (レス) id: 81939e753e (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - キスマイさん» ハイハイ♪いらっしゃーい(笑)自分でももどかしくなりながら書いてます。でも、皆さんにキュンしてもらえて頑張れます！仕事バラしはねぇ……ｳﾌﾌ…お楽しみに♪いつでもお喋りしに来て下さいね♪お待ちしてまーす。 (2015年2月26日 8時) (レス) id: dd156b7728 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2015年1月19日 8時
