キミのその手を その声を 【2】

初雪 ページ45

どんなにゆっくり歩いても、結局、マンションへ近づいていくことは止められない。


ニカとの距離も平行。


冗談混じりの会話は、居心地がいいけれど、近づくゴールがその終わりを予感させる。



「あっ！！」



突然、ニカが大きな声を出すから、ビックリして立ち止まる。



「なっ、何？！」


「雪だよっ！」



そう言ったニカが空を見上げる。



「本当だ〜。」



並んで見上げた夜空からヒラヒラと舞い落ちる雪。

どこか幻想的な光景に見とれる。



「キレイだね。」


「うん。初雪だよね。」


「なんか、得した気分。」



そう言って、空に手を伸ばすニカの横顔は、子供みたいに無邪気。

一緒に手を伸ばして、舞い落ちる雪を掴まえようと背伸びする。



「積もるかな？」


「積もったら雪合戦するんでしょ？」


「やりたいねっ。オレ、メッチャ得意だからっ。」


「靴下からパンツまでビショビショになるまで遊んで、お母さんに怒られるタイプでしょ。」


「そうそう。で、風邪引くパターン。」


「ニカっぽい。ﾌﾌｯ」



指先、手のひら、頬、髪、舞い降りる雪が、触れては、消える。

少しずつ舞い落ちる雪が大きくなる。


もう一度、その雪の一片を掴まえようと手を伸ばすと、ゆっくりとその指先に雪が舞い降りた。



「あっ。掴まえたっ！」



雪が触れた指先が熱を奪われた。


次の瞬間。



「手、冷たっ！」



夜空に伸ばした私の手に、ニカの手が重なった。


私の手を捕まえるみたいに、大きな手が包み込むとゆっくりと手を降ろした。



「……… 手袋、忘れたから。」



重なる手の主を見上げると、少し照れた表情のニカと目があった。



「オレも忘れた。」


「せっかく、プレゼントしたのに。」



それでもニカの手は暖かくて、冷えた私の手を優しく暖めてくれた。



「ごめんごめん。」


「意味ないじゃん。」



冷たい冬からニカの手を守ってあげたかったのに。


口に出せない理由を心の中で呟く私に、ニカがはにかんだ笑顔で言った。






「こうやって帰ろう？」






私の手を掴んでいたニカの手が緩むと、スルリと表面を滑って、指を絡めて繋がった。



「ねっ？」



確認するみたいに言うと、キュッと手を握る。




手のひらから伝わる体温。




肩が触れる距離。




すぐ隣にある笑顔。




「うん。」




このまま、時間が止まればいのに。




そう思いながら、ニカの手を握り返した。

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