キミのその手を その声を 【2】

恋する自覚 ページ28

結局、一日待ったニカからの連絡はなく、少しガッカリした気分で実家を後にした私は、真紀とのおしゃべりでこのストレスを発散させようと気分を切り替えて電車に乗った。

家の冷蔵庫の中にある食材を思い出しながら、お昼ご飯のメニューを考える。


おせちも食べ飽きたし、イタリアンにするかな〜。寒いし、昼だけどトマト鍋にして、〆はパスタかリゾット。

鍋やるときは、ニカを呼ぶ約束だったけど、今回は、いいよね。

真紀がいるから一人じゃないし。


心の中でニカに言い訳すると、足りない食材を買ってから部屋に戻ることにした。





・・・





「おもっ！」



帰省用の大きめバックと買い物してきたスーパーの袋を玄関にドサリと置くと鍵を閉める。

ほんの数日留守にしただけの部屋は、懐かしい匂いがした。


荷物を適当に片付けてからキッチンに入ると必要な食材を取り出そうと冷蔵庫を開ける。


そこには、ニカサンタからのプレゼントが出番を待ちわびて、キンキンに冷えていた。



「今日も出番はなさそうだよ。」



そう言って、『ニカ専用』の文字を指で弾いた。



髪をまとめて、エプロンを装着。

ジーンズにざっくりニットの休日スタイル。


リビングの大きな窓からは、一月の澄んだ光が射し込んでラグを暖かく照らしていた。



「とりあえず、真紀に連絡。」



早めに帰宅したことを真紀に連絡すると、すぐに返信がくる。



― こちらは、デザートを購入中！急いでいくわ〜。



真紀の買ってきてくれるデザートは、いつもお洒落で美味しいから、楽しみ。


ニカの買ってきてくれたたい焼きも美味しかったな…。



「なんてねっ。」



心の中の一人言につっこむように口に出す。



日常生活の些細な出来事に、ニカのことが重なる。



恋する自覚。



少しずつ、少しずつ、前へ進む勇気が出る。



スマホに『ニカ』を表示させ、言葉を選びながらメッセージを打ち込む。



― 帰宅したよ。
今日は、友達とトマト鍋やるよ。
一人じゃないから、いいよね。



一応、連絡。


返信は、しても、しなくてもいいように、『？』は、つけない。



期待しない予防線。



弱虫の知恵。



しばらく送られた私のメッセージ画面を眺めていたけど、既読になる気配はなさそうだったので、画面を閉じると、トマト鍋の下準備に取りかかった。

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