キミのその手を その声を 【2】

気分だけ ページ3

コレは子供っぽいな……。


ん〜……。


茶色系…よりも、黒系？



一つ一つ、手袋を手に取りながらイメージしてみる。



仔犬みたいで、子供っぽいけど、手だけはすごくキレイで…男っぽい。



真っ黒のレザーの手袋とか似合いそうな手なんだけど、私の中のニカのイメージとあまりにもかけ離れてるし……。



「やっぱり、こっちかなぁ……。」



グレー系のツイード風の毛糸で編まれた手袋。
小指の縁から掌にかけて、少しのレザー。


フワフワの優しい手触りがニカみたい。



自分の手にはめてみると、手の大きな私でも、やっぱり少し指先が余った。



きっと、ニカの手ならピッタリだろうね。




「……… ﾌﾌｯ 」




「………何一人でニヤついてるのよ。」


「うわぁっ…あっ、決まった？」



気づけばすぐ後ろに真紀が立っていた。



「決まったよ。コレにする。」



先に決めたハットに合いそうな、高級感のあるグレーのストール。変化のある豹柄が個性的。



「いいね。すごくオシャレ！」


「でしょ？すっごい満足！」



真紀は、そう言って笑うと、私の手元に視線を落とした。



「…… 誰かに、プレゼント？」


「えっ？」



ニカを思って選んだ手袋をはめたままだったことに気がついて、慌てて外すと、手袋を棚に戻した。






「……… 気分だけ、味わってたところ。」






口に出すと、どうしようもなく寂しくなって。

胸の奥がきゅっとなる。




だから、嫌なの……。




寂しいとか、苦しいとか、もれなく付いてくるから。




だから、一方的に、可愛がってたいの。




「恋人気分……。」




そう言って俯くと、真紀は、私の肩を優しく撫でて、困ったような笑顔で続けた。



「それなら、もっと楽しそうにしなきゃ。
A、泣きそうな顔してるよ。」



何でもお見通しの真紀は、「よしっ！」と気合いを入れるように私の肩をポンと叩くと、棚に戻された手袋を手にとってレジへ向かった。



「真紀っ？」



慌てて追いかけるけど、どんどん進む真紀は、止めることのできない超特急。



「話は、あとで聞く。」



男前にいい放つと、レジカウンターに旦那様用のプレゼントを並べて、ラッピングを依頼した。


そして、訳もわからず隣に立つ私の前に、さっき、私が、ニカを思って選んだ手袋を置いた。




「買うよね。」




それは、もはや、確認ではなく、強制。



「……… はい。」



それ以外の答えはなく、私は、財布を取り出した。

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