一人鍋の卒業 ページ41
「飲もうっ。ねっ。」
そう言うと、もう一度、ポンッと優しく私に触れた。
「……… うん。」
きっと、ニカの目には、拗ねた私が写ったんだろうな。
それで、慰めてくれようとしたんだよね。
それだけだよね…。
気がつくと、ニカの優しい手は、もう、私の上にはなく、テーブルで箸を転がしていた。
「Aちゃん、本当に面白いね。」
空気を変えるかのように、ニカが話し出す。
「面白いって…。それ、誉め言葉？」
『ニカ専用』缶ビールを手渡しながら、向かい側の椅子に座ると、まだ、少し緊張した。
ニカの可愛さには、いつまでたっても慣れない。
「誉め言葉じゃん！オレ、言われたらメッチャ嬉しいからねっ！」
ニカの不思議な価値観。
「カッコいいとか、素敵とかよりも？」
「それも嬉しいけど、なんか、オレのキャラじゃなくない？」
「キャラねぇ……。」
ニカの言うことが、いまいち理解しきれず、曖昧な返事を返す。
今時の子って、自分でキャラとか作っちゃうのかな…。なんか、不自由そう…。
今、目の前のニカが本物なのか、キャラなのか、ちょっとだけ疑った。
「とりあえず、乾杯しよっ。」
『A専用』ビールのプルタブを引く。
「何に乾杯する？」
「ニカが決めて。」
特に何も思い付かなかったから、ニカに丸投げ。
『ニカ専用』ビールのプルタブを開けて、しばらく考えた仕草で目をつぶっていたニカがパッとひらめいた顔でビールを掲げた。
私も同じようにビールを掲げると、笑顔のニカが高らかと音頭をとった。
「一人鍋、卒業に乾杯！」
「かんぱ……って、また、バカにしてるっ。」
軽く缶ビールをぶつけながら、二人で笑う。
一口含んだビールは、適度な爽やかさとほろ苦さ。
鍋の蓋を取ると、ゆっくりと温かな湯気が上がる。
この瞬間が好き。
「バカになんてしてないじゃん。」
「いいって、いいって。」
ニカの言い訳を軽く流しながら、ネギを避けて鍋を取り分けていると、ニカの視線を感じる。
取り分けた器をニカに手渡すと、ありがとうと言いながら受け取ったニカが『一人鍋卒業』の意味を教えてくれた。
「これからは、オレと鍋しよっ。」
「えっ？」
「そうすれば、二人鍋でしょ。」
熱々の野菜をフゥフゥしながら、特別気にする風でもなく、さらりと言ったニカの台詞は、女子を勘違いさせる要素が十分すぎるほど含まれていた。
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ふるみ♪ - ニカは私のすべて〜☆にかが主人公ということでこの小説よんだら面白い！じゃないか！これからもこれ読み続けたい！ (2016年7月29日 21時) (
レス) id: 2271a2e46e (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - えりPさん» ありがとうございます(*^_^*)二階堂くんの雰囲気でてますか？よかったー。私の頭の中の妄想二階堂くんなので、願望てんこ盛りですが、えりPさんの癒しになれていたら嬉しいです。 (2016年4月16日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
えりP(プロフ) - あいさん♪♪作品素晴らしいです！ニカの声や表情がにニカらしくて、すごく引き込まれています。ニカからの優しいハグに涙が溢れてきました。引き続き、ニカの世界を楽しませていただきますね。 (2016年4月14日 12時) (レス) id: 55468976ba (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - えりPさん» はじめまして(*^_^*)最初から読んでいただけるなんて感激です！ありがとうございます。パスワード作品については、メッセージで送らせていただきますので、ご確認ください。これからも、よろしくお願いします。 (2016年4月11日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
えりP(プロフ) - あいさん、はじめまして。えりＰと申します。hiyoちゃんの紹介で、これから読むのをとっても楽しみにしています。承認よろしくお願いします。 (2016年4月11日 9時) (レス) id: 55468976ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2014年12月23日 18時
