傘とお礼 ページ30
表札の謎が更なる謎を呼んだ夜から、ニカに会うことはなく、あの夜は、何かの時間の狭間的な夢の空間だったのではないかと思い始めた頃、ニカの気配だけが私の前に現れた。
結婚式の翌日から、真紀は、ハネムーンへ出かけて、あの夜の話をしたくてもできないストレスを仕事へ向けるという、寂しいOLの日常にどっぷりと浸かって帰宅した夜。
私の部屋のドアノブに、あの夜、ニカに貸したビニール傘とビニール袋が引っかけてあった。
返ってこないと思ってた…。
あの夜、最後に見た、小学生男子を思わせるニカの姿。
そして、笑顔。
――― トクン
一瞬、胸の奥が鳴った……。
隣のニカの部屋の様子を伺ってみたけど、何の気配も感じられない。
いつ、返しにきたんだろう？
時計を見ると、20時を過ぎたところだった。
傘とビニール袋を回収して、部屋に入るとビニール袋の中を覗いた。
傘のお礼だとは思うけど、そのチョイスがニカ流で思わず吹き出す。
「ﾌﾌｯ ビールって、どういうことよ。」
しかも、冬季限定の缶ビールが２本。
確かに、コンビニで見かけて、美味しそうだとは思っていたけど。
まさか、お礼に貰うとは、思ってなかったよ。
ニカがどういう気持ちで、このビールを選んだのか、またしても謎は増えるばかり。
「風呂上がりにいただきまーす。」
冷蔵庫に入れておこうと、ビールを袋から取り出すと、ヒラヒラと紙切れが舞い落ちた。
「まさか、レシート！？」
ニカなら遣りかねないミス。
床に落ちた紙切れを拾うと、それは、ニカからのメッセージだった。
表札と同じ、お世辞にも上手いとは言えないあの字が並んでいた。
―・―・―・―・―
Aちゃんへ
傘ありがとう。
ちゃんと返します。
カギも見つかったよ。
ビールは、焼おにぎりのお礼です。
今度、一緒に飲もうねっ！
ニカより
―・―・―・―・―
お礼なのに、一緒に飲もうねって……。
これは、先に一人で飲むことは、許されない感じですか。
風呂上がりに飲む気満々だった私は、ちょっとガッカリ…。
でも、『今度、一緒に飲もうね。』って言葉が、次の約束に思えて、少し嬉しかった。
その日が来るのか、わからないけれど…。
油性マジックで、缶ビールに直接、
『ニカ専用』
『A専用』
って、大きく書いてから、冷蔵庫に入れた。
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ふるみ♪ - ニカは私のすべて〜☆にかが主人公ということでこの小説よんだら面白い！じゃないか！これからもこれ読み続けたい！ (2016年7月29日 21時) (
レス) id: 2271a2e46e (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - えりPさん» ありがとうございます(*^_^*)二階堂くんの雰囲気でてますか？よかったー。私の頭の中の妄想二階堂くんなので、願望てんこ盛りですが、えりPさんの癒しになれていたら嬉しいです。 (2016年4月16日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
えりP(プロフ) - あいさん♪♪作品素晴らしいです！ニカの声や表情がにニカらしくて、すごく引き込まれています。ニカからの優しいハグに涙が溢れてきました。引き続き、ニカの世界を楽しませていただきますね。 (2016年4月14日 12時) (レス) id: 55468976ba (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - えりPさん» はじめまして(*^_^*)最初から読んでいただけるなんて感激です！ありがとうございます。パスワード作品については、メッセージで送らせていただきますので、ご確認ください。これからも、よろしくお願いします。 (2016年4月11日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
えりP(プロフ) - あいさん、はじめまして。えりＰと申します。hiyoちゃんの紹介で、これから読むのをとっても楽しみにしています。承認よろしくお願いします。 (2016年4月11日 9時) (レス) id: 55468976ba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2014年12月23日 18時
