終着点 ページ17
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「……しょう、た……」
夢じゃない。
記憶のなかの通りの。写真のなかの通りの。
あどけなくてとうめいな、章大の笑顔。
現実の_____________現実に、今ここに存在する、輪郭を持った失くし人のすがた。
「章大！！」
わたしは彼の肩を掴み、ガタン！と大きな音を立てて椅子から立ち上がった。
教室中の視線が集まる。
おどろいたように目を丸くし、こちらを見上げる章大の顔。
______________見上げる？
「なしたん、おーくら」
「………え」
「寝ぼけてるん？」
ふと、章大の肩を掴む、自分の手が目に入る。
節張った大きな手。
周囲が可笑しそうに、くすくすと笑い声を漏らしている。
「おはよう」
ふいに真後ろから声がして。
振り向けば、そこに、困ったように笑う少女が立っていた。
あどけない表情の___________なつかしいセーラー服に身を包んだ、その少女___________
それは間違いなく、中学生のわたしだった。
「おはよ、A……」
章大が切なげに微笑む。
幼いわたしもまたあいまいに笑み、自席に着く。
これはいったい……なにが起こっているのだろう。
「あ、おーくら、
さっき横ちゃんが呼んでたで。
おまえ今日日直やろ？」
______________職員室に向かう途中、
やけに見晴らしのいい視界の先、階段の踊り場に取り付けられた姿見で、自分の姿を確認した。
…………大倉。
章大が呼んだ通り。
そこには、学生服に身を包んだ、すらりと背の高い少年が立っている。
いったいどういうことなのか。
夢とは思えないリアルな、生々しい感覚で時間が過ぎていく。
見知った教室。
窓の外で揺れる秋桜。
わたしは中学三年生の『大倉忠義』として、身に覚えのある授業を受けながら……この状況を整理しようと、必死で頭を働かせていた。
あのとき、わたしは海に落ちたはずだ。
だけどその寸前に、久遠の花の花弁を一枚、手に取っている。
だとしたらやはり、この世界は。
「…………」
ふと、おなじように授業を受ける幼いわたしと目が合い、少女は、すこし照れたようにそっと微笑んだ。
久遠の花の伝説。
わたしはもしかしたらほんとうに、現実に、タイムリープをしているのかもしれない。
どういうわけか自分自身ではなく、忠義の身体に入り込んでしまったわけだが____________
９月。
今日は、章大が此処に居た最期の日で。
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タルヒ(プロフ) - ショウタくん生きてて良かったです。兄弟って似るんですね。すばるくんも章ちゃんも好きにさせちゃう女の子ってどんな子なんでしょう笑 (2019年3月17日 13時) (
レス) id: d9b43e6eea (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - 多恵子さん» 多恵子さん！お付き合いいただきありがとうございました^ ^章大くんとすばるくんの仲良し兄弟、わたしもとっても大好きです。そう言っていただけるような作品が書けて本当に良かったと思います(TT)ありがとうございました！ (2018年8月30日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - めちゃさん» めちゃさん！お付き合いいただきありがとうございました^ ^もったいないお言葉…うれしいです。書いてよかったと心から思います(TT)次はもっと楽しんでいただける作品が書けるよう頑張りますね！ (2018年8月30日 23時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
多恵子(プロフ) - 完結お疲れさまです。章大くんが弟思いで死んじゃうところで思わず涙が出てしまいました、…こんな素敵なお話をありがとうございます。最後の、すばるくんの後五年まっとけ、は章大くんと似てるのか似てないのか。全てのキャラが素敵でした。ほんとに楽しかったです！ (2018年8月29日 8時) (レス) id: 2178e0ef46 (このIDを非表示/違反報告)
めちゃ(プロフ) - 完結お疲れ様でした。なかなか難しいお話でしたが引き込まれていました。行った事のないはずの景色が見えるようで登場人物がどれも素敵で。それからいつの頃からか私の頭の中にまで「ノスタルジア」が鳴ってました。また次作楽しみにしています。 (2018年8月28日 22時) (レス) id: 994f71b8c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年4月1日 18時
