悪女に付き合う暇はない【HQ】

真顔コンビ ページ33

『びっくりした……。幽霊かと思った』

「幽霊見たかのような顔してたよ」

それは失礼を。
軽く頭を下げれば、京治は目を細めた。

「Aも大きくなったね。前はこれくらいだったのに」

『それ豆粒』

「冗談だよ」

『真顔で冗談言うの、変わらない』

二人してふ、と吹き出す。何年と会っていなくても、自然と隣に並べている。

しばらく小刻みに肩を震えさせる京治が少し心配になり、顔を覗き込む。

「あれ、お二人さーん。仲良いね？」

「黒尾さん……」

『(誰だろう)』

「知り合いなの？」

「えぇ、まぁ」

「つれないな〜！」

突然やってきたトサカさんと京治は知り合いらしい。

様子を眺めていると、トサカさんがこちらを向いた。ギョッとしたのが顔に出てないといいな。

黒「さっきスライディング土下座決めてた眼鏡ちゃんじゃん。見た目にそぐわず面白いことしてたよな」

『どうも』

「A、それ褒められてない」

なんでか危機感を察知し、すっと避けて京治を盾にする。

黒「やっぱり仲良いんだろ……あ、青城の誰か来た」

トサカさんに第六感が反応したのかと思いきや、違ったらしい。


「「「「「あ」」」」」

声が重なったのは岩泉さん、及川さん、花巻さん、松川さんとうちだ。

『逢引を見られてしまった』

及「エ！？ ま、まさか」

赤「誤解されるからその言い方はやめようか」

『了解』

松「知り合いだったの？」

『……知り合い……？』

知り合いとは、ある程度の付き合いがある間柄を指す、だったか。

赤「友達以上恋人未満ってヤツですね」

『？』

及「うん、君がボケるとツッコミが居なくなるのは分かったよ」

なんかよく分からないが、いつのまにかトサカさんが消えたのは分かる。幽霊はトサカさんだった……？ えっ怖。

岩「お前は確か……梟谷のセッターか」

赤「はい」

花「あぁ、あの木兎のとこの」

赤「(なんだこの絡まれてる感)」


明かりが漏れる校舎の方を見て、食堂のことを思い出した。

『みなさん夜ご飯食べましたか？』

岩「いや、これからだ」

松「ちょうど向かってるところ」

及「小谷ちゃんは？」

『まだです』

花「じゃあ小谷も一緒に行くか」

疑問形ではなく肯定か。

『では同行させてもらいます』

そう答えると、くいっと京治に腕を引かれた。

赤「Aが元気そうでよかった」


そっと囁かれる。前と変わらない距離感なはずなのに、少しだけ緊張してしまった。

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