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ふと、気が付いた。
そこはどこかも何なのかも全く分からない。
いや、分からないということすら、よくわからない。
何でここにいるんだろ…。
そうじゃなくて…。
俺は誰なんだろ…。
何の記憶もない。
自分が誰で、どこで生まれて、今まで何をしてきたのか。
ただこの見知らぬ場所で、意識だけが取り残されている。
怖い…。
何も分からないのに、何かは知ってるこの感覚。
記憶と意識が全くリンクしない居心地の悪さだ。
「大丈夫ですか？あなた、川原で倒れていたらしいのですが、その時の事覚えていますか？」
白い服を着た男性が訪ねてくる。
誰なんだお前は…。
いや、俺も誰なんだ…？
「……。自分の名前、分かりますか？」
分からない。
分からないから、首を横に振ろう。
「じゃあ、家の場所はわかりますか？」
だから、分からないよ…。
「これは…。もしよかったら、この紙に、このペンで何でもいいので文字を書いてみてください」
文字？
紙？
ペン？
知ってるような、知らないような。
とにかく書いてみよう。
でも、このペン…どうやって使うんだっけ…？
あれ…？
「わかりました。もう結構です…。念のために聞いておきますが、しゃべることはできますか？」
喋る…？
それなら…。
「できます…」
「良かった…。何もかも忘れてるわけじゃないみたいだ…」
忘れてる？
俺が…？
何を…？
「一応あなたの症状を伝えておきます。あなたは記憶喪失です」
―
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年2月17日 15時
