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彼は食い入るようにテレビに映し出された番組を見ているようだ。
私の事にも全然気が付いてないみたい。
良かった…、無事だったんだ…。
でも、そんなに熱心に何を見ているんだろう。
何々…、盆栽のお手入れの仕方…。
え？！ジント君、盆栽に興味があるの…？！
見た目の割に、しぶーい…。
私はそっとジント君の隣までいって、その横顔を覗いてみた。
こんなに近づいているのに、彼は真剣そのものでテレビにくぎ付け状態だった。
すごい集中力だ。
「ジント君、こんな暗いとこでテレビ観てたら目、悪くなるわよ？」
私の言葉でようやく隣に人がいることに気が付いたのか、彼は昨日みたいに肩と首をすぼめて驚いて飛び跳ねていた。
その衝撃で膝の上に抱きかかえられていたバンビまで、仁人くんの頭ぐらいまで跳ね上がる。
「ご、ごめん！そんなに驚かすつもりなかったんだけど！」
でも驚いた表情のジント君が何だかとっても可愛くって私はついつい笑ってしまった。
「うふふ、ごめんね。それから電機はこのスイッチを押したら点くから。教えてなくってごめんね」
私はリビングの電気をつけると、玄関先に放り出した荷物を取りに行くことにした。
するとその時だった。
私の背後で、驚くべきことが…。
「ご、ごめんなさい…」
私の耳に聞きなれない声が聞こえたのだ。
私は急いで振り返った。
視線の先には申し訳なさそうにうつむくジント君。
まさか…。
「テレビ…勝手に見てしまって…ごめんなさい…」
しゃ、しゃべった…！
やっぱりジント君がしゃべってる！！
初めて声を聴いた。
思ってたよりも低めの、とっても優しい声。
やっと、声を聞かせてくれたんだ…。
「い、いいのよ！朝も言ったでしょ？部屋のものは何でも好きに使っていいって！さ、お腹すいたでしょ？今から私がごちそう作ってあげるからね！」
仕事の疲れも吹き飛び、私はとっても嬉しくなってご飯の支度を始めるのだった。
『今日、彼が初めてしゃべった。そして、どうやら盆栽が好きみたい』
観察ノートにまた一つ、ジント君の発見が増えた。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年2月17日 15時
