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神様の暇つぶし。 ページ10

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その後も不死川さんは度々お店に来るようになった。


その度に、少しずつ、色んな話をした。


自分のことを人に話すのはあまり得意ではなかったが、どうしてか不死川さんといると、自然と話せてしまう。




私も、不死川さんも、独りだった。




私たちの会話はまるで、似通った色合いの思い出を持ち寄って床一面に敷き詰める以呂波加留多(いろはかるた)みたいだった。



杏寿郎と同じ、鬼殺隊にいた元剣士。
自分はたまたま運良く生き延びた、なんて彼は言っていたが、それ以上多くを語らない彼に、私は深追いすることはしなかった。




みんな、色んなものを失い、捨てながら生きている。




そう思うと、少しだけ、楽になれるような気がした。





それだけで良かったのに、平穏な日常というものは、飽き性な神様によっていつも狂わされるらしい。





「俺、Aが好きだァ。」





ある日の閉店後、突然の告白──



嫌なはずがなかった。



あなたの隣は、とても居心地が良かったから。



でも…




『すみません。
 お気持ちは有り難いのですが…
 お応え出来かねます。』



好意を無下にするのは、心が痛んだ。


それは、相手が不死川さんだったからだというのは、自分でもよく分かっていた。



でも、無理なものは無理なのだ。


恋愛は、()うに諦めたのだから。





「やっぱそうかァ…
 何となく、分かってたんだ。」



ひとつだけ我儘を聞いてくれ、と気まずそうに笑った不死川さんに、頷いた私が間違っていたのかもしれない。




ふわりと抱きしめられたその腕の中には、


捨てたはずの愛は確かにそこにあって、


手を伸ばしたくなる自分もまた、確かに存在していたのだから。










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無機質な向日葵。→←◆夕闇に滲む恋情。



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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥   
作品ジャンル:恋愛
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羽糸(プロフ) - 金平糖さん» コメントありがとうございます!!他の作品も読んで頂いているんですね!嬉しいです。これからももっと楽しんで頂けるように頑張ります!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» そんな風に言ってくれるあなたを私は尊敬しています。コメント力が高すぎて何て返そうか悩んだけど、シンプルに、その感想が嬉しいです。読んでくれてありがとう!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます🎊私、涙脆いので目から滝が流れてくるように泣きました。他の作品も読ませて頂いてるのですが、全て私好みの作品です。本当に完結おめでとうございます!!! (2021年11月7日 18時) (レス) id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 完結まで本当にお疲れ様でした。原作の実弥さんならこう言うだろう、こうするだろう、と強く頷きながら読みました。どんなにしんどい内容でも、文章の紡ぎ方と言葉の選び方で昇華させるあなたを尊敬しています。読ませてくれてありがとう! (2021年11月7日 11時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん、はじめまして!コメントありがとうございます。書いている私も胸が痛めつつ書いてます(笑)この後は完結まで一気に仕上げた後で公開予定です。もう少しだけお付き合いくださいませ☺️ (2021年11月6日 10時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年10月24日 0時

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