塗り替えられた記憶。 ページ6
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「袖、通してみても良いか?」
『…あ、はい。』
ほんの少しの不自然な間に、不死川さんは気付いてしまったようだ。
「訳アリってことかァ…アンタも、俺も。」
フッと笑ったように俯いた不死川さんは、ずっと袖の内に隠していた右手を出した。
私はその光景に息を呑んだ。
不死川さんが何故、人気の無い時間帯に現れたのかが、すぐに分かってしまったから。
慌ててシャツを広げると、着物をずらして上半身を露わにした不死川さんがくるりと背を向けた。
肩から背中、腕まで、無数の傷が生々しく残っていた。
脇腹から下は晒を巻いていて分からないが、きっと傷だらけなのだろう。
何も言わずシャツを近づければ、袖に通す逞しい腕が嫌でも目に入った。
こういう傷跡には、見覚えがあった。
もちろんこんなに沢山の傷跡は初めてだったが、これは紛いもなく、杏寿郎の背中にあったものと類似していた。
「アンタ、名前は?」
背を向けたまま、ボタンを留める不死川さんが私に問いかける。
『Aです…』
ふぅん、とだけ返した不死川さんが、全てのボタンを留め終わり、こちらを振り向いた。
「これもAが仕立てたのか?」
最初から不死川さんのために仕立てたのではと疑いたくなるほど、それは不死川の体にピッタリだった。
色々と思考が追いつかないままコクコクと頷けば、不死川さんは近くに立てかけてある姿見に自分の姿を映した。
よく似合っている。
私が見たかった姿とは違えど、その悲しい記憶を呼び起こさせない程に完成された着こなしに、感謝すら湧いてくる。
「何つー顔してンの…」
鏡越しにこちらを見る不死川さんは、とても優しい目をしていて、私は今にも泣き出してしまいそうだった。
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羽糸(プロフ) - 金平糖さん» コメントありがとうございます!!他の作品も読んで頂いているんですね!嬉しいです。これからももっと楽しんで頂けるように頑張ります!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» そんな風に言ってくれるあなたを私は尊敬しています。コメント力が高すぎて何て返そうか悩んだけど、シンプルに、その感想が嬉しいです。読んでくれてありがとう!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます🎊私、涙脆いので目から滝が流れてくるように泣きました。他の作品も読ませて頂いてるのですが、全て私好みの作品です。本当に完結おめでとうございます!!! (2021年11月7日 18時) (レス) id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 完結まで本当にお疲れ様でした。原作の実弥さんならこう言うだろう、こうするだろう、と強く頷きながら読みました。どんなにしんどい内容でも、文章の紡ぎ方と言葉の選び方で昇華させるあなたを尊敬しています。読ませてくれてありがとう! (2021年11月7日 11時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん、はじめまして!コメントありがとうございます。書いている私も胸が痛めつつ書いてます(笑)この後は完結まで一気に仕上げた後で公開予定です。もう少しだけお付き合いくださいませ☺️ (2021年11月6日 10時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年10月24日 0時