◇疾うに愛は… ページ30
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誰も住んでいない大きな屋敷に足を踏み入れる。
風に乗って、甘い香りが鼻をくすぐって、昔の記憶が蘇る。
「折角、綺麗に咲いたのになあ。」
十分すぎるほどによく咲いたヤマユリは、Aさんが言ってた通り、本当に美しかった。
それなのに、肝心な2人が居ないなんて…
俺からすれば、似たような2人だった。
背負っている悲しみも、孤独も。
不器用に足掻く2人には、痣の代償による限られた時間というのは、大きな障害だったのだろう。
煉獄が死んだところから歯車が狂ったのか、元はと言えば鬼が全ての元凶なのか。
「疾うに愛は捨てたなんて派手な嘘だよ…」
示し合わせたように、2人して同じことを言いやがって。
立派に根を張って、その時を待っていた癖に…
もう何人と、昔の仲間を見送ってきたが、こんなにも苦い感情を残していったのは、不死川だけだ。
「2人、ちゃんと逢えてると良いな…」
微に揺れるヤマユリに、俺は背を向けた。
照りつける太陽は、より一層その光を強めた。
(完)
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羽糸(プロフ) - 金平糖さん» コメントありがとうございます!!他の作品も読んで頂いているんですね!嬉しいです。これからももっと楽しんで頂けるように頑張ります!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» そんな風に言ってくれるあなたを私は尊敬しています。コメント力が高すぎて何て返そうか悩んだけど、シンプルに、その感想が嬉しいです。読んでくれてありがとう!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます🎊私、涙脆いので目から滝が流れてくるように泣きました。他の作品も読ませて頂いてるのですが、全て私好みの作品です。本当に完結おめでとうございます!!! (2021年11月7日 18時) (レス) id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 完結まで本当にお疲れ様でした。原作の実弥さんならこう言うだろう、こうするだろう、と強く頷きながら読みました。どんなにしんどい内容でも、文章の紡ぎ方と言葉の選び方で昇華させるあなたを尊敬しています。読ませてくれてありがとう! (2021年11月7日 11時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん、はじめまして!コメントありがとうございます。書いている私も胸が痛めつつ書いてます(笑)この後は完結まで一気に仕上げた後で公開予定です。もう少しだけお付き合いくださいませ☺️ (2021年11月6日 10時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年10月24日 0時