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◆恋路の果て。 ページ26

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熱を帯びた呼吸の音と、勢いよく肌がぶつかる音、粘着質な水音……どれをとってもこれが最初で最後だなんて。



普段とは違う甘い声は、俺の脳髄を溶かす勢いで感情諸共支配した。



このまま2人で溶け合えてしまえたらどんなに良いだろう。



そこはかとなく湧き上がる熱情は少しも残さずAに捧げた。



名前を呼び合って、今までの時間を確かめるように愛を伝え合った。




それも、朝が来ればすべて終わってしまう。




紫色の夕闇の中で温かな涙と引き換えに手渡したのは、悲しみだった。








昔からそうだった。



愛する人は簡単に指の隙間をすり抜けるように、幻に変わり果てるのだ。




それが宿命(さだめ)で、Aが強く望むのなら、俺は罪をまた紐解くしかない。



元々親殺しの罪人で、俺は疾うに裁かれているはずだったんだから。







「本当に、良いんだな?」



その問いに、Aは静かに微笑み、頷いた。



「最後にしてやれることがこれしか無ェなんてなァ…」


『実弥さんじゃなきゃ、駄目なんです。』



俺はAの首に手を掛けた。

すぐに折れてしまいそうな細い首と、まだ先ほどの熱が冷めやらない体温が、俺の迷いを誘う。




「本当に、愛してる。
 こんなこと、したくはねェけど。」



『ごめんなさい…
 でも、私も実弥さんを愛しています。』




これで、地獄行きは確定だ。



でもやっと、終わらせられる。



愛する人を殺めるのは、もうこれで最後だ。











ゆっくりと目を閉じたAの首を掴む手に、俺は一気に力を込めた。



めきめきと(きし)む骨の音と、食い込む指の感触は、鬼を斬る感覚なんかよりも比べものにならない程、酷く気分が悪かった。








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◆只ならぬ何か。→←◆



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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥   
作品ジャンル:恋愛
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羽糸(プロフ) - 金平糖さん» コメントありがとうございます!!他の作品も読んで頂いているんですね!嬉しいです。これからももっと楽しんで頂けるように頑張ります!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» そんな風に言ってくれるあなたを私は尊敬しています。コメント力が高すぎて何て返そうか悩んだけど、シンプルに、その感想が嬉しいです。読んでくれてありがとう!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます🎊私、涙脆いので目から滝が流れてくるように泣きました。他の作品も読ませて頂いてるのですが、全て私好みの作品です。本当に完結おめでとうございます!!! (2021年11月7日 18時) (レス) id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 完結まで本当にお疲れ様でした。原作の実弥さんならこう言うだろう、こうするだろう、と強く頷きながら読みました。どんなにしんどい内容でも、文章の紡ぎ方と言葉の選び方で昇華させるあなたを尊敬しています。読ませてくれてありがとう! (2021年11月7日 11時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん、はじめまして!コメントありがとうございます。書いている私も胸が痛めつつ書いてます(笑)この後は完結まで一気に仕上げた後で公開予定です。もう少しだけお付き合いくださいませ☺️ (2021年11月6日 10時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年10月24日 0時

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