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◇疾うに愛は… ページ22

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花束を持って、誰も住んでいない大きな屋敷に足を踏み入れる。




風に乗って、甘い香りが鼻をくすぐって、昔の記憶が蘇る。






「本当に、あれから3年じゃねーか…
 しかも派手に咲き乱れやがって。」





十分すぎるほどによく咲いたヤマユリは、Aさんが言ってた通り、本当に美しかった。




2本だけ、ハサミで丁度いい長さに切り、花束に混ぜてやった。




「俺がここまで育ててやったんだ、感謝しろよ。」



振り返った縁側には、勿論誰もいない。



ゆっくりと立ち上がり、屋敷を後にする。










人気のない墓地の一角で、俺は腰を下ろした。



“不死川”の名が刻まれたその中で眠る2人に、花を手向ける。



持ってきた花束を2つに分けて、ヤマユリを1本ずつ入れる。


茎をくるりと摘んで、互いの花を向かい合わせれば、緩やかに吹きつけた風に、その花弁が微笑むように揺れた。




「2人とも、もう愛は捨てたなんて地味な嘘、吐くんじゃねーぞ。」




元はと言えば鬼が全ての元凶だ。


いなくなっても残るのは、目に見える傷だけじゃない。




不死川もAさんも、おんなじ顔して自分は地獄に堕ちるから無縁仏で…なんて言いやがるから、勝手に同じ墓に入れてやった。





「一緒にいたら、捨てなくて済むだろ?」






再び、ヤマユリは交互に微笑んだ。













(完)





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作者より(22/09/24修正)→←◆幸せが舞うとき。



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設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥   
作品ジャンル:恋愛
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羽糸(プロフ) - 金平糖さん» コメントありがとうございます!!他の作品も読んで頂いているんですね!嬉しいです。これからももっと楽しんで頂けるように頑張ります!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - ひよさん» そんな風に言ってくれるあなたを私は尊敬しています。コメント力が高すぎて何て返そうか悩んだけど、シンプルに、その感想が嬉しいです。読んでくれてありがとう!! (2021年11月9日 18時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます🎊私、涙脆いので目から滝が流れてくるように泣きました。他の作品も読ませて頂いてるのですが、全て私好みの作品です。本当に完結おめでとうございます!!! (2021年11月7日 18時) (レス) id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - 完結まで本当にお疲れ様でした。原作の実弥さんならこう言うだろう、こうするだろう、と強く頷きながら読みました。どんなにしんどい内容でも、文章の紡ぎ方と言葉の選び方で昇華させるあなたを尊敬しています。読ませてくれてありがとう! (2021年11月7日 11時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
羽糸(プロフ) - 衣世さん» 衣世さん、はじめまして!コメントありがとうございます。書いている私も胸が痛めつつ書いてます(笑)この後は完結まで一気に仕上げた後で公開予定です。もう少しだけお付き合いくださいませ☺️ (2021年11月6日 10時) (レス) id: 85bd249cc8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:羽糸 | 作成日時:2021年10月24日 0時

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