ふわふわ飛んでけ～【ヒロアカ】【男主】 (ページ9)

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第七話抹消ヒーローページ9

『46ｍ』

「な、今確かに使おうって…」
「個性を消した」

　今まで一つも喋ること無く見ているだけだった相澤が、ボールを投げようとした緑谷を眺めながら怠そうに口を開く。
　次第にボサボサだった髪は逆立っていき、眠たそうだった目は鋭くなり緑谷を睨む。

「つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学出来てしまう」
「消した…！あのゴーグル…そうか！！｣

　視ただけで、人の個性を抹消する"個性"

「抹消ヒーロー、イレイザー・ヘッド！！」

　何やら硬くなった表情で立ち尽くしている緑谷と、個性を使いながら話をしている相澤の姿を見て、Aは不安げな表情を浮かべる。
　爆豪が言うに、緑谷は無個性。超人的な身体能力が無い限り、今までの記録を覆すことができない。しかしそれでは、あの入試を乗り越えて、今ここにいるのはおかしい。だが、決して爆豪が嘘を言っているようには見えなかった。

　それでも、緑谷には何か(・・)がある。

「"個性"は戻した…。ボール投げは2回だ。とっとと済ませな」

　相澤にもう一度投げるように促され、もう一度円の中心に立った緑谷だったが、俯いたまま何かブツブツと呟いている。その様子を見守りながら、Aは心の中で応援した。
　せっかくクラスメイトになれた仲間だ。
　早々に、除籍処分になってお別れだなんて、寂しい。

　がんばれ、と唱えたと同時に、不意に口を引き締めた緑谷が、円の中で軽く助走をつけて腕を大きく振りかぶった。

　―――ＳＭＡＳＨ！

　先程とは違い、大空を飛んでいったボールは705.3ｍ。爆豪に並ぶその距離に、うっすらと目を見開いて緑谷を凝視すれば、指が痛々しいほど腫れ上がっていた。
　まぎれもなく、あれは個性だ。
　隣に並び立つ爆豪も、驚いて緑谷を見ている。

　緑谷は痛みに耐えながらも拳を握りしめ、相澤に向かって言い放つ。

「…先生！まだ、動けます」

「こいつ…！」

　その後、爆豪が緑谷に個性を使いながら掴み掛ろうとして相澤に布で捕縛されるなどのいざこざがあったが、無事全種目を終了した。