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第三十七話 復讐心 ページ41






「ッあ、あの時はありがとうございました」


 改めて目の前にして、固唾を飲み込む。何とか口から紡がれた声が、震えていないか。其れさえも分からない程、ホーソーンは緊張していた。



「貴方の御蔭で私と・・・彼女は、今ここに存命している。本来なら、二度と目を覚まさなくても可笑しくない程の重傷を負っていましたが、"奇跡が起こった"ように一命を取り止めたそうです」

「・・・よかった」


 ああ、矢張り―――。
 この御方は驕ること無く、黒い感情を抱く私をただ見守るように視ている。寝台(ベッド)に視線を落としたホーソンは、込み上げた涙を抑えるように眼鏡を上げた。



「・・・ミッチェルは『一族の名誉を取り戻す』為に、この作戦へ参加しました。しかし彼女は、金を餌に死者の列に引き込まれたッ!私は―――ッ?」


 Aが来る前に会話したフィッツジェラルドの言葉を思い出し、抑えきれない感情が渦巻き爪が食い込むまで拳を握り締める。ふいに、少し低い体温を拳に感じて我に返った。

 体温の先には、白い指が抑えるように拳を触れていた。



「君の気持は分かるよ。ただ、償えない罪はない。だけど残るのは虚無だけだよ」

「・・・それでも私は許せない」



「貴方に感謝を」


 目を瞑って祈りを捧げると、ホーソーンは点滴を支えにAの前から忽然と姿を消した。




「――――ッ!?」


 温もりの消えた寝台(ベッド)の上を整えようと手を伸ばした時だった。ぞくりと、背筋に冷たいものが走ったのは。

 感じたのはそれだけではない。ソレが断言出来るほど分からないが、間違いなく"何か"が変わった。





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牧高(プロフ) - 楽しく読ませていただいてます☺️続きはどのように見れば良いのでしょうか……? (5月29日 6時) (レス) id: 40bd569e74 (このIDを非表示/違反報告)
夜叉 - とても面白く読ませていただきました。 続きが気になります。  この小説好きです。 (2022年11月28日 18時) (レス) @page48 id: 6eda935019 (このIDを非表示/違反報告)
空天 馬(プロフ) - cheap sweetsさん» そう言っていただけるのが何よりも幸せです。読んでくださってありがとうございます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: e9bd85a3ea (このIDを非表示/違反報告)
cheap sweets(プロフ) - とても面白いです。楽しく読ませていただきました。 (2018年9月25日 17時) (レス) id: e7a61814de (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 更新お願いします! (2018年8月15日 13時) (レス) id: 7a5b092a46 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空天 馬 | 作成日時:2016年7月13日 3時

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