第五話 魔法薬学 ページ8
朝になると、僕達新入生はホグワーツ初めての授業を順に受けて行く。次の授業は、僕が一番楽しみにしていた魔法薬学の授業だ。
魔法薬学は、少しでも手順を間違えると失敗する。リスクがある分、完成させた時の達成感が僕は好きだった。
「この授業では、杖を振ったり、馬鹿げた呪文を唱えたりしない」
生徒全員が席についた頃、後ろの扉から先生が教室へ入室する。
「魔法薬調合の微妙な科学と芸術的な技を、諸君が理解できるとは期待していない。だが、一部の素質のある選ばれた者には伝授してやろう」
漆黒のローブを翻し、順に出席を取った後、先生はゆっくりと話し始めた。
「人の心を操り感覚を惑わせる技を。名声を瓶の中に詰め栄光を醸造し死にすら蓋をする、そういう技を」
大演説の後、教室中が静まり返る。素っ気ない挨拶ではあったが、丁寧且つ簡潔な言葉で纏められた演説は、聞いていて飽きない内容だった。
それに、先生の声は不思議だ。何故か僕に、安心感を与える。
「ポッター！アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるかな？」
肩まである黒い髪を眺めていると、いきなり先生はハリーの名を呼んで質問をする。名を呼ばれたハリーは、あきらかに嫌そうな顔をしたのを僕は見逃さなかった。
「……分かりません」
「ベアゾール石を見つけてこいと言われたら、どこを探すかね？」
分からないと答えるハリーの傍で、ハーマイオニーが高々と手を挙げているが、先生は敢えてそれを無視してハリーに質問を続ける。
「モンクスフードとウルフスベインとの違いはなんだね？」
「分かりません」
何故、先生はハリーにばかり質問をするのだろう。それが不思議で仕方なく、先生を真っ直ぐ見ていると、先生は僕の視線に気づいたのか僕の名を呼んだ。
「……アーカーシャ」
「はい」
「今の質問を答えてみろ」
僕はゆっくり瞬きしてから、緩く微笑んで答えを口にする。最初の質問は、強力な眠り薬。つまりは、生ける屍の水薬になる。
ベゾアール石は、山羊の胃を探す。それが一番手っ取り早い。
そして、最後の質問。
「この２つは同じ植物で、別名をアナコイトといいますが、トリカブトの事です」
「諸君、何故ノートに書き取らんのかね？ポッターの無礼な態度で、グリフィンドールは1点減点」
間違いを指摘されないと言うことは、全て合っていたのだろう。しかしまあ、ハリーへの酷い言い分に僕は肩を竦めた。
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作者名：空天 馬
| 作成日時：2016年6月11日 1時
