悪役令嬢なんかじゃない！【nqrse】

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それじゃあね、としばらく世間話をしたあとにこにこ笑って去っていった叔母さん。どうやらあらきさんの大学の近くに寄ってみたついでに一時的に荷物を持ってもらっていたらしく、買い物袋を両手に抱えて颯爽と去っていった。……そのあらきさん(息子)をこの場に残したまま。

「それじゃああとは若い人同士で！」とか何とか言ってたけど何をさせたかったんだろう。本に出てきたことあるから知ってる、あれお見合いのときに仲人(なこうど)とか両親とかが言う台詞だよね。

さすがに従兄弟同士での見合いを自覚もないまま現在進行形で開催されてる覚えはないので言葉の綾だと思いたい。というか祈りたい。


しかしなんで私がこんなことを考えているのかというと、ただ単に現実逃避のためで、更に言うならばこの状態になるまでの道筋を思い出すことでなんとかならないかなと期待している節があるからだ。これでなんとかなったらそれはそれですごいんだけど。

5歳くらいから親戚付き合いはなく、この前知り合いの知り合いとして軽く二言三言話した(私は何も返事してなかったような気がするから厳密に言えば違うかも)なだけの、数歳年上の教育実習生。

見た目が派手な人は条件反射で私が縮こまっちゃうもんだから、この人と話をするのは多分苦手だ。どの口が、鏡を見てから言えと言われればそれまでなんだけど、見た目が派手だと、なんとなく小中学校で私のことを責めたり意地悪をした子達を思い出してしまうから。

気まずすぎてもういっそ霧か煙みたいにひゅって消えたい。けれどどんなにそう願ったとしても水蒸気の集まりになれるなんてことはなく、私の体を構成するタンパク質とかカルシウムとかその他諸々のたくさんのもの(だったはず。人体の原料は得意分野ではないから記憶があやふやだ)は相変わらず質量を持ったままだ。

唇を噛み締めたまま黙り込んでいると、どうしようかとでも言いたげにがりがりと頭を掻いたあらきさんが口を開く。

「…あー、Aちゃん、でいいかな？」
「あっ、は、はい！」
「そんなに緊張しなくても取って食いやしませんよ〜」

緊張を解こうとしてくれているのか、冷たく大人びた顔をしているのにふはっと笑った笑顔は思ったよりも子供っぽい。笑顔はともかく顔については私も叔母さんもブーメランなんだけどね。

「あれでしょ、この前なるせたちと会ったよね。従姉妹だったなんて気付かなかったわ」
「私も全然…すみません」
「なんで謝るの」

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