8話 ページ9
ぼんやりと目を開く。
しかし、目に入ってきた景色はいつもの自分達子供の家の薄汚れた灰色の天井ではなくて、豪華できらびやかな白い大理石で出来た天井。
売ったらいくらになるのかな……(売るな)
「起きたか？」
こてん、と首を枕の上で回して声の方を見る。
あれ、これ枕？私の知ってる枕と全然違う……なんか鳥の羽の上に頭乗っけてるみたい。
ベッドの横の椅子に座っていたのは、左側だけコーンロウにされてひとつに束ねられた黒髪に、チャコールグレーの切れ長の目。
───────ジャミルだ。
「うちのが世話をかけたな」
やや疲れた様子で額に手を当てている姿に親近感が湧く。
お前も苦労してんだな…………いやこれは同情か。
「あのさぁ」
「なんだ？」
「まともそうなお前だから聞くけどさ、今どういう状況なの？」
その瞬間、切れ長の瞳が大きく見開かれた。
唇は、うわっという驚きの形で固まっていて。
「マジか…………
あいつら、そんなんも本人に教えてなかったのか………」
「教えてなかったのよ」
同調したあと、上半身をもふもふのベッドからよっこいしょと右手を支えにして起こす。
これも高く売れそうな布団で、この質感と手触りは絹だろうか。それに金銀の刺繍など、随分と贅沢なデザイン。
熱砂の国の夏の夜の寝苦しさを解消するためか、通気性もよい。
作り手にもよるだろうが、無名の織り手が作ったのでもこれは10万マドルは行きそうだ。一番安く見積もってみて、10万マドル。
要はどちゃくそ高級品なのである。私が寝てていいのかな……
しかし、何故か嗅いだことのある匂いがするのだ、この布団は。
甘いけれど甘ったるくはなく、ヴァニラのような上品な香り。暖かくて安心するが、匂いは相当薄くなっている。
香でも焚いてるのか？
それとも誰かの香水？
それを素直にジャミルに伝えると、少しチャコールグレーの瞳が光った。
「嗅いだことのある匂い、か……それも相当薄くなっていると」
「ああ」
首を縦に振ると、ふはっと笑い声がした。
「そりゃあそうだろうな。お前はどうやら鼻がいいらしい」
────────だってその布団、12年前にエマ様が使っていた布団だぞ。
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マザーグース(プロフ) - ルイさん» 嬉しいです………頑張りますね！ (2021年3月27日 12時) (
レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - うわぁぁぁぁめっちゃ好きです！更新頑張ってください!! (2021年3月27日 3時) (レス) id: 719e5dac86 (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - 碧生さん» ありがとうございます！！更新頑張りますね！！ (2021年3月19日 15時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
碧生(プロフ) - 凄く面白いです！更新待ってます！ (2021年3月19日 9時) (レス) id: 7ffc4172b1 (このIDを非表示/違反報告)
マザーグース(プロフ) - ドさん» ありがとうございます。リアルが多忙なため遅くなっておりますが、じきに受験が終わるので更新ペースが上がります。ですので、これからもよろしくお願いします！ (2021年1月28日 12時) (レス) id: 446891bd7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マザーグース | 作者ホームページ：
作成日時：2021年1月3日 21時
