皇子様 ページ34
士郎)なんだか本物のお姫様みたいだね
しのに支えてもらいながら、長かった階段を降りてAは安堵の息をついた。
そんな2人の両サイドから士郎と風丸がコップを片手にやってくる。
A)そういうしーくんこそ皇子様みたいだよ
「すっごく似合ってるね」というAの一言に士郎は微笑む。
士郎)そのようなお言葉を頂けて光栄です、姫
片腕をお腹の前に持ってきて、礼儀正しくお辞儀をする士郎の姿はまさに皇子様そのもの。
その様子を隣で見ていた風丸にとって、先を越されたという気持ちでいっぱいだった。
A)…姫はなえちゃんでしょう?
だが、Aには響いていない様子だ。
通常運転なAの様子に他人事ながらにほっとしてしまった風丸。
しの)おおー、様になってんな
風丸)お前は馬子にも衣装だけどな
余計な一言を添えた風丸にしのはむっと唇をへの字に曲げて、タキシード姿の風丸を頭から爪先まで品定めするかのように見つめた。
しの)風丸先輩こそ、着る衣装間違えたんじゃ…………なんでもありません!!お許しをッ!!
風丸)危うくお前にかけるところだった
言い返そうとしたしのだったが、風丸の地雷に触れる前に自ら踏みとどまった。
目の前で水の入ったコップを向けられて言えるわけがない…。
しの)オ"ッ……お、恐ろしいこと言わないでぇ…
風丸)本気だったからな
死んだ魚のような眼差しで見つめてくる風丸に、しのは「あははははは…」と引き攣った笑みを浮かべる。
しの)ほっ、ほらほらあ!A、風丸先輩も褒めたげてよ!!
「このままじゃ命が危うい」と、士郎と楽しく談話しているAを風丸の前に差し出す。
唐突の出来事にAは戸惑いながらも風丸へと目線を向ける。
A)……………
顎に手を当てながらじーっと見つめてくるAに風丸はつい、顔を赤くしてしまう。
A)風丸くんって
やっと口を開いたAの言葉に風丸はピクリと肩を動かす。
何を言われるのか、とても気になるようだ。
A)美人だよね
風丸)………は?
予想外の言葉に風丸はついつい間抜けな声が出てしまうが、Aは気にせずに続ける。
A)いや、本当に美人だなぁって…綺麗だからタキシードも似合っててかっこいいなって
風丸)っ…!
「かっこいい」…好きな子から言われて顔を赤くしてしまわない人間などいないだろう。
A)風丸くんって背も高くていいよね、身体も意外とガッシリしてr
しの)ちょっっ、とっ!ストップしよっか?!
まだまだ止まらないといった様子で褒め続けるAの口を、咄嗟にしのが手で抑える。
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作者名：39 x他1人 | 作成日時：2023年7月28日 19時
