【まほやく】雪降る科学者のソナタ (ページ6)

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.(賢者視点)

｢＿＿ちょっと、何この荷物？任務、猛獣退治なんだけど。天下の仕立て屋様にもなるとまち針でケダモノを手懐けられる訳？｣

｢ご、ごめんね。邪魔になっちゃったかな。想い人さんに逢いに行くって言うから、ドレスを何着か持っていきたくて！サイズも沢山用意したんだ、これとかどうかな、雪原みたいで素敵じゃない？あっ、ごめんね、俺ばかり話して……。｣

｢素敵だよクロエ、きっと喜んで貰える。クロエが選んだドレスなんだ、間違いない。僕が保証するよ。｣

翌日早朝。西師弟のペースに巻き込まれ早くもうんざりしているオーエンや、眠らず(正しくは眠れず)ブラッドリーを捜索し続け些か不機嫌なミスラを筆頭に、本調子でない魔法使いたちはロビーに集合していた。いつも通りなのは西師弟とムルくらいだろう。シャイロックは朝に弱いらしく、どことなく気だるげだ。双子も可愛らしい欠伸をしている。

結局ブラッドリーは帰って来なかった。相当遠くに、若しくは南の国みたいな土地勘のない場所に飛ばされたのだろう。仕方が無いので今回は彼抜きで任務を進めることになった。せっかくの恩赦チャンスだったのに……。

｢さっさと行きますよ｣とミスラが扉を出す。北の国の魔法使いたちは嫌々ながらも率先して扉をくぐり、西の国の魔法使いたちは私をエスコートするように扉へ誘う。改めて、本当に土地柄が出るなぁ……。

私達は白く光る扉の先へ足を踏み入れた。

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｢さ、寒い……！｣

｢あなた、軟弱すぎますよ。｣

広がる限りの雪原。というか雪しか無い。幸いなことに吹雪いて居らず、放射冷却という言葉が相応しい程に晴れている。ここが北の国で1番暖かい場所だなんて過酷すぎる、北海道なんて比じゃないくらいに寒い。

すぐさまラスティカが守護魔法を掛けてくれてやがて震えは収まった。と同時に眼前に広がる広大な純白に改めて圧倒される。色んな意味でこんな所に生身の人間が住めるわけない。

ムルはぴょーんと箒で空に舞い上がるとそのままどこかへ消えてしまった。いつものことで慣れっこではあるが、国が国なため少し心配だ。北の国の魔法使いたちに目配せすると”俺/僕/我は追いかけません”の顔で目を逸らされる。仕方ない、西に頼むか……うわ全員笑顔でこっち見てる。それはそれで何で？

お目付け役で一緒に飛んでいってしまったクロエを見送って、想い人さん大捜索の旅が始まったのであった。