【まほやく】雪降る科学者のソナタ (ページ3)

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.(賢者視点)

｢おはようございます、オーエン。｣

｢おはよう賢者様。朝からだらしの無い顔で許されるのは君が賢者だからだよ、称号を無くせば君はただの寝癖が付いた人間だ。そんな自分をどう思う？｣

｢あはは、寝癖付いてましたか。朝から絶好調ですね、いい事でもあったんですか？｣

魔法舎の朝は早い。厨房からは既に良い香りがしていて、海色の髪の彼が今もせっせと皆のために食事を作っている。北の魔法使いであるオーエンも今日は特別早起きなようで、いつもに増してニヤニヤと意地の悪い(彼は楽しいとこの笑顔が出る)笑みを浮かべている。

私が軽く反応してしまったせいでオーエンはつまらなそうに鼻を鳴らしたが、すぐにいつもの笑顔に戻った。これは相当いい事があったみたいだな、悲しいことにオーエンにとっての良い事は大体の人にとっての悪いことだ、私は彼の次の言葉を固唾を飲んで待った。

｢北の魔法使いが死んだんだよ、僕のことを何回も殺した奴さ。鳥たちが教えてくれた。……ふふ、いい気味。｣

『……へえ、どんな人なんですか？』

私はその時、何故か分からないが心の中にあの人が出てきた。僕だよ、それ僕のことだよ、と言うように内側から私の心をノックする。

オーエンは私が食いついたことが意外だったのか一瞬考え込むような動きをした。しかしすぐさま彼はマントを翻して私の視界から消えた。

『オーエン、どこ行……、え。』

｢＿＿こんな奴だよ。胃液みたいな色をした長髪に腐った林檎みたいな瞳をした、僕より少しだけ若い魔法使い。病気になっちゃったんだってさ、馬鹿だよね。あいつは昔から強いのに北っぽく無かったし、何か変なやつだった。｣

オーエンは彼の姿のまま愉快そうに笑った後、ふと笑うのを止めてどこかを見つめた。その表情は知り合いの死を悲しむ青年そのもので、私はきりきりと心が締め付けられていくのを感じた。

その姿はどこからどう見ても夢の彼だ、彼はやっぱり石になったのだ。死ぬ前に私に何故か逢いに来たんだ、面識もない私の所に。

『……オーエン……。』

｢何？その顔。気持ち悪いな。｣

『あっ、待……』

先程までの機嫌の良さは何処へやら、彼は態度を一変させると元の姿に戻り霧のように消えてしまった。

……夢の彼は私に何を伝えたかったのだろう。誰かに相談するべきかな。うん、北の国で1番話が通じそうな双子に相談しよう。

私は足早にスノウとホワイトを探し始めた。