五話 ページ5
サクサクと芝生を踏みながらいつもの場所にいってみると、いつもは膝の上に本を広げ、上体を起こして座っているのだが、今日はその体を芝生の上に寝かせている。
「A？」
隣に腰を下ろし、瞼に掛かるブラウンの髪を避けると、しっかりと閉じられた白いまぶた。
「……寝ているのか…？」
手を鼻の下に持っていくと、微かに風を感じることができ、ふぅ、と、息を吐いた。
人騒がせなヤツめ。
ギロリと睨み付けるも、死んだかのように動かないAには、何ら効果もないことだ。
白い陶器のような肌に、長くふっさりとした睫毛が影を落とす。
薄い桃色の形のいい唇は、キュッと閉じられていて、柔らかいブラウンの髪はさらさらと芝生に影を落としている。
「フン、このディオともあろうものが…」
当てられるなど……
と、心の中で誰かに対し、必死に弁論していたが、バカらしくなって、Aと同じ様に芝生に寝転がった。
ポカポカと暖かい日差しを一身に受けると、なるほど、確かに眠気がやって来る。
うとうととしかけたころ、ガサ、と、芝生が音をたてた。
そちらに視線を向けると、上体を起こして、こちらに目線を向けるAと目があった。
「…ディオ…？…もうそんな時間ですか？」
んー、と体を伸ばすAを横目に、僕も体を起こす。
離れていく草と土の香りが本の少しだけなごりおしいと感じたが、直ぐにAと同じ視線になると、いつものように口を開いた。
「ああ…珍しく良く眠っていたな。」
「本当。普段なら飛び起きるんですけどね。」
「熱でもあるんじゃあないか？」
冗談混じりにいってやると、自分でヒタリと、手を額に当てている。
「まさか、大丈夫ですよ。」
「ふ、そうか。」
そのまま、さわさわと風が静かに芝生を揺らす音だけが耳に届き、首をかしげた。
Aの膝の上には、きちんと閉じられた茶色い本
しかし、Aの視線は庭の向こうに向けられている。
「…今日は本を読まないのか？」
ただ純粋に疑問を口に出してみると、Aは、本の少しだけ目を見開き、首をかしげた。
「え？…ええ、いつもディオが見ていて飽きない景色って、どんなものなのか興味があって。」
そう言って口を閉ざしたAの瞳は、珍しくキラキラと輝いているようにも見えた。
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東雲出雲(プロフ) - 罠做さん» ありがとうございます！文章が素敵だなんて(*´ー｀*)続編できましたので、そちらもどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m (2015年8月18日 11時) (
レス) id: 64e849f3b1 (このIDを非表示/違反報告)
東雲出雲(プロフ) - ランタンさん» ありがとうございます！続編ができたので、そちらもどうぞ宜しくお願い致しますm(__)m (2015年8月18日 11時) (レス) id: 64e849f3b1 (このIDを非表示/違反報告)
罠做(プロフ) - 続編楽しみにしてます！！文章が素敵で読み易かったです、続き気になりますねo(^▽^)o (2015年8月18日 2時) (レス) id: 1a112de355 (このIDを非表示/違反報告)
ランタン(プロフ) - この話とてもよかったです！続編も頑張ってください！ (2015年8月17日 20時) (レス) id: 751d6d43a5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：東雲出雲 | 作成日時：2015年8月15日 11時
