. ページ5
(青)
収録を終えた途端、みんなの屈託のない笑顔が、いつも通りの楽しい会話が、どこか遠く感じてしまうことに気がついた。
こんないい人ばっかり囲まれてて幸せやなと思う反面、忙しいのにいつも通り笑顔で気遣いができるメンバーに対して、自分は何をしてるんやろう、何ができるんやろうって考え込んでしまう。
次のツアーに向けて話も進み始めてるからもっと良い物を作れるようにしないと、俺にはそれくらいしかできひん………。
この間のドームも、色んな意見貰って……
悲しんだり怒ってる声があったことも、聞いてる。
じゃあどうすればベストやったか？って考えても色んな条件がある中で、全員を満足させられる答えが出せへんかった。
みんなは俺に任せてくれてるのに、全然何も返せてないのが…苦しかった。
楽屋に戻る前に「トイレに行く」といい気付いたら向かっていた喫煙所。
苦しくなる心を落ち着かせるように煙草に火をつけ咥える。
なんかいつもより手が震えて上手く火がつけられへん。
「…………ふぅ、」
やっと息ができるような感覚。
すぐにいっぱいなっていく灰皿。
「えほっえほっ…！！」
急に胸が苦しくなって、咳き込んでしまう。
しばらく咳をしてると落ち着いてきて、また煙草を手に取る。
…………あ、楽屋そろそろ戻らなヤバいか、
重たい腰を上げたものの、上手く力が入らなくて地べたに座り込んでしまった。
あかん、視界がぐるぐるする。
……気持ち悪い。
「………っ、」
流星っ！、照史が名前を呼んでくれた気がする。
…そんなわけ、ないのに。
そう思いながら、スッと意識が遠のいていった。
目が覚めると真っ白の天井。
「……ん、…、？」
なんでこんなとこいるんやっけ、……………あ、倒れたんやったかな。
腕を見ると点滴が付けられていて、すぐ横のテーブルにはたくさんの飲み物やゼリー、などが置かれてた。
誰かが届けに来てくれたんやろう。
…………また、迷惑かけてしまった。
途端に溢れ出てくる涙。
時刻を見れば夜中の2時。
今日は生放送のラジオがある日やから、今頃照史は家に着いた頃やろうか……
みんな忙しいはずやのに、俺が自己管理できてないせいで迷惑かけて、……もうほんまに情けない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 251人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：流優
| 作成日時：2022年10月12日 20時
