到着 ページ10
「さて、じゃあ行くかぁ。」
「行くって、やっぱり…」
「梵天。」
朝食を済ませ、身支度を整えると髪をセットし終わった蘭ちゃんが洗面台から戻って来てニッコリと微笑む。
いやまぁ、そういう話ではあったけど、やっぱり2人の仕事場(?)に行くのは昨日今日で覚悟が出来るものでは無い。
行きたく無さすぎて竜君の腕をガッシリ掴むと呆れた表情の竜君と目が合った。
「お前なぁ、もうどうにもなんねーよ。諦めて開き直ってけ。」
「無茶言うなぁ竜君…」
「昨日一応話はしてあっから、後は面接するだけだし竜胆の言う通り堂々と行け?」
な、と目を細めて笑う蘭ちゃんは私を見世物感覚で見ている気がする。
まぁ、昔からそういう気質ではあるけど…。
蘭ちゃんの車に乗り込み、後部座席で1人どうにかこの話は無かった事になれど神に祈ったものの、無情にも無事に梵天のビルに到着してしまった。
車から降りて建物の入口前で立ち止まり、建物の外観を呆然と眺める。
「どした〜?A。」
「案外普通の建物なんだね、そして緊張で吐きそう…。」
ひょこ、と横から蘭ちゃんが顔を覗き込んで来たのを視界の端で捉えつつも視線は建物から外せなかった。
帰りたいなぁ〜〜〜。なんて思いも虚しく、2人に腕を掴まれた私は抵抗出来る術もなくずるずると引きずられて中へと連れ込まれた。
中に入ると無機質ではあるものの小綺麗な廊下を進み、エレベーターに乗り込んだ。
竜君が押した最上階のボタンがオレンジに点灯する。
「A、ビクビク怯えてウサギみて〜。」
はは、と他人事だからか余裕綽々な蘭ちゃんは子供をあやす様に私の頭を優しく撫で回す。
それにされるがままの私は既に泣きそうだったが、エレベーターの到着音で嫌でも現実を眼前に突き付けられるハメになる。
「ホラ、とっとと降りろよ。」
「り、竜君…」
「あ?何。」
「…ごめん、動けないから手、繋いで欲しい…。」
「はー?ったく、しゃーねーな…汗」
扉が開き目的のフロアが目の前には広がっているものの、最早私の足は竦んでいて歩けそうになかった。
呼吸が上手く出来ない、怖い。どんな人がこの先にいるのか、私はどうなるのか。どんな目に遭うのか。
何も分からない事がより一層の恐怖を掻き立てて、最早全て投げ出して逃げ出したい。
「Aは怖がりだなぁ、俺も手ぇ繋いでやるから安心しろ?♡」
「ぅ…蘭ちゃん…」
「うわめっちゃ震えてんじゃんやば〜笑」
ふと、眼前に人影。
「オイ。」
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作者名:結城 | 作成日時:2021年11月9日 6時