55.「僕たちは僕」 ページ16
「……そう、何人かとは和解できたのね」
お母さんに最近おそ松たちとの間に起きた出来事を全て話した。
十四松が励ましてくれること、怪我をしたカラ松を介抱してお互いを許せたこと、チョロ松への心的外傷を克服したこと。
子供のように嬉々として話すことはもう出来なくなっていたが、それでもお母さんは嬉しそうに話しているということを感じ取ったようだ。
「最初はみんな怖かったし憎らしかったんだけど、十四松はどんぐりを七つと手紙をくれたし、カラ松は私のこと必要だって叱ってくれた。……できれば、昔に言って欲しかったけど。」
「十四松は昔から誰よりも優しくてまわりのことによく気がつく子だったからねぇ。カラ松だって喧嘩っ早かったけれど、相手にとって理不尽なことで怒ることは滅多に無かったのよ。今は自分にとって理不尽なことでも怒らないけれど。……チョロ松はどうなの?」
お母さんは私とは違う目線で兄たちを見ていた。
それぞれの良点、欠点を本人以上に把握している。
だからこそ私と兄たちの仲が回復するのかということについて酷く心配しているようであった。
「……チョロ松は小さい頃私に嫌がらせしてきてた記憶が強くてさ。いつの間にか、それがトラウマになって忘れられなくなってたんだよね。克服した今でもまだ出てきたりするんだけど、もう怖くはないかな」
「……克服、できて良かった。あの子は昔酷かったものね、今こそマトモにはなったけれど」
お母さんも昔のチョロ松に思う部分があったのか、目を伏せて小さな鍋に味噌を加えた。
普段は私が味噌汁を作っているのだが、今日はお母さんが作るというので、私は卵とじを作っていた。
鍋の中を覗くと、木綿豆腐と油揚げ、あとは小松菜が入っているのが一瞬見えた。
「……お母さん、小松菜好きだよね。」
「そういうAはほうれん草大好きでしょ?今日はお浸しにしたから、たくさん食べてね。ほうれん草好きなの、Aと一松くらいしか居ないんだから」
そうして、母は私のことについてもよく知っていた。
昔からほうれん草は大好きだった。
たしか、小学校に上がる少し前の食卓にほうれん草の料理がでたときは兄の誰かと仲良く分けながら食べていたような気がする。
お母さんの話を聞く限り、それは一松なのだが。
他の兄弟はほうれん草を私たちに押し付けていた。
「……よし、完成!皆を起こしてくるから、Aはご飯を並べておいてね。」
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紫垣(プロフ) - 続きが待ち遠しい!!……もっと見つけるのが早かったらまだ更新続いてたのかな( ; ; ) (4月18日 5時) (レス) @page21 id: f62f374630 (このIDを非表示/違反報告)
燎_*(プロフ) - 更新停止……だと!?!?!?誰か、!!この作者を呼び戻してこい!!! (1月17日 3時) (レス) @page21 id: 4b8e8fd2cd (このIDを非表示/違反報告)
低浮上な塩なんだなあ(プロフ) - つ、続きは…続きは何処ですか…!?!?(血涙)更新をずっと楽しみに待っております…… (10月30日 2時) (レス) @page21 id: 6cf2860157 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - この作品が大好きです。更新待ってます! (6月4日 22時) (レス) @page21 id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらっち(プロフ) - 何年でも更新を待ちます。 (2022年5月15日 0時) (レス) @page21 id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2016年1月17日 17時