54.「僕はあいつで」 ページ15
怒らせて、しまっただろうか。
Aには本当はもう何も残ってないのかもしれない。
僕たちが兄であるという事実も、兄という存在自体も、もう残っていないのかもしれない。
それか、僕たちとAの兄弟関係と兄弟感覚が昔のまま成長を止めてしまっているのかもしれない。
Aは僕たちを兄呼ばわりしたことがない。
幼い頃はその健気な声で鈴のように呼んでいたのかもしれないが、その鈴は既に錆びきって鳴らなくなっていた。
僕たちが攻撃的になってから、Aは随分と変わったものだ。
僕たちの前で笑わなくなり、その分母さんや父さん、更には交友関係のある人たちに素直な笑顔を見せるようになった。
まるで「早く嫌がらせをしに来てみろよ」とでもいいたそうな、そう思えるくらい露骨にだ。
もちろんその頃には僕たちは完全に「個体」としてこの家に存在していたし、Aに関して疾しい感情を抱かなくなってきていた頃だったので嫌がらせなどは一切していなかったが。
それでも悪いのは僕たち六つ子で、悪いことをした後は謝ることが妥当であった。
それがたとえ罪深き大罪だったとしても、だ。
「……ごめん、今のは忘れて。……散歩行ってくる、朝ご飯はその後食べるから」
もし、僕たちが仲の良い兄妹のままでいて、Aが純粋なままでいたなら。
もし、僕たちが欲に負けずに我慢して生きていたなら。
世界はもっとこう、枯れずに済んだのかもしれない。
僕たちはどこかへ就職できていたかもしれないし、Aが名門大学に面接で落とされることも無かったのかもしれない。
Aの将来を壊したのは僕たちだ。
Aの人生を狂わせたのは僕たちだ。
幼い頃の純粋無垢なAをころしてまで僕たちが得たものは、ただの堕落し荒廃した生活であったのだ。
「そう、いってらっしゃい。」
Aは本当に興味なさそうな無機質な声で僕に別れを告げた。
もう、笑顔を向けてはくれないのかな。
僕たちを、許してはくれないのかな。
罪悪感で胸が潰れそうになって、目頭につんとした違和感が走ったあとに、じわり、と熱が広がっていく感覚があった。
それを隠すようにして、必死に見飽きた景色を一気に駆け抜けていった。
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紫垣(プロフ) - 続きが待ち遠しい！！……もっと見つけるのが早かったらまだ更新続いてたのかな（ ; ; ） (4月18日 5時) (
レス) @page21 id: f62f374630 (このIDを非表示/違反報告)
燎_＊(プロフ) - 更新停止……だと！？！？！？誰か、！！この作者を呼び戻してこい！！！ (1月17日 3時) (レス) @page21 id: 4b8e8fd2cd (このIDを非表示/違反報告)
低浮上な塩なんだなあ(プロフ) - つ、続きは…続きは何処ですか…!?!?(血涙)更新をずっと楽しみに待っております…… (10月30日 2時) (レス) @page21 id: 6cf2860157 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - この作品が大好きです。更新待ってます！ (6月4日 22時) (レス) @page21 id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆらっち(プロフ) - 何年でも更新を待ちます。 (2022年5月15日 0時) (レス) @page21 id: ab3ad11547 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：竹ノ狐。 | 作成日時：2016年1月17日 17時
