23.「時代は振売」 ページ25
被り物を部屋の隅に投げ捨ててから小一時間ほど経った。
先ほどまで兄たちの声が下から聞こえていたのだが、何故だが聞こえなくなっていた。
「A、いいかしら?」
ふと、襖の向こうから声がした。
お母さんだ。よくないわけがない。
「どうぞお母さん。何かあったの?さっきからおそ松たち、やけに静かだけど。」
「そのことなんだけどね、A。……ニート達が、なんとハローワークに行ったらしいの…!!」
「そ、そうなの?!…お母さん、良かったじゃんか!これで生活が楽になるかも!」
お母さんは歓喜のあまりに涙していた。
そっかあ、全員ニートだったのかあ…。
私はその衝撃的な事実に涙しそうだよお母さん。
家に居なかったからなんの音もしなかったのか。
おそ松たちは今家にはいない。
つまり、自由に家の中を行き来できる。
ということは。
「……お母さん。私、家の掃除してくるね。」
しばらくの間、兄たちがずっと家に居たために家の中、特に一回の居間の掃除がろくにできない状態にあった。
だが、今は違う。この埃まみれの鬱蒼とした居間を、この家を、私の手で生まれ変わらせてみせる。
そう、今は「この世の要らない子代表松野A」ではなく、「唯一この世に必要とされるかもしれないスキルを手に入れた逸材代表松野A」なのだ。
右手に雑巾、左手に箒、右足元には水の張ったバケツ、左足元には大きな塵取り。
今日だけは、私は掃除ガチ勢になる。なってやる。
まずは床を掃く。これだけでも埃が出てくるからたまったものじゃない。
次にきつく絞った濡れ雑巾で畳を拭いていく。
この作業には心が折れた。
埃がごっそり取れすぎて、逆に恐ろしかった。
次に乾拭き雑巾で同じように拭いていった。
濡れ雑巾で大分埃が取れたのか、いくらか埃の量は減っていた。
次は窓。タンス。救急箱の中。ちゃぶ台…。
結局今の掃除をしただけでかなり疲れた。
だが、今朝と比べてかなり綺麗になった。
ここまでやれば、少しは兄たちのジメジメしたニート生活にも区切りがつくであろう。
掃除道具を全て片付けて、窓辺に寝転がる。
昼下がりの心地よい日差しにまんまとのせられ、夜とは真逆の心地よい寝入りで眠りに落ちた。
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kuu - これいちいち歌の歌詞になってますね、 (2022年1月1日 12時) (レス) @page38 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 面白いです、これからシリアスだったり恋愛がある、が楽しみです (2022年1月1日 10時) (レス) @page1 id: f964c54957 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - 最高すぎます (2020年9月24日 2時) (レス) id: e43e7b87c6 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なるべく早く更新してくださいっ……!……お願いです………………本当に楽しみすぎるのですよっ!! (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
偶数LOVE!(心々) - なんでこんなに文才があるのですか??これは絶対ず〜っと!過去最高1位ですねっ!!(納得です♪)どんな小説の中でも1番好きですっ!(本当に) 星なんかいも押したいけど、前も押したからムリだ……… (2019年9月7日 18時) (レス) id: 01d7da7a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竹ノ狐。 | 作成日時:2015年11月26日 1時