□75.独占欲の塊 ページ37
***
あずさ｢待って、｣
.
その場から去ろうとした私を、
彼女が簡単に逃がしてくれるわけはなかった。
.
あずさ｢…ちゃんと、私の目を見て言って。
直輝のことは好きじゃないって…！｣
｢……え…、｣
あずさ｢そうじゃなきゃ安心なんか出来ない。｣
.
.
……直輝のことは好きじゃない、
たったそれだけ、それだけ言えばこの場は収まる。
大丈夫、言える…、言える、
.
｢…私は、森島さんのこと…、好きじゃないです。｣
.
あずさ｢……そうですか、分かりました。｣
.
…あ、案外あっさりと引いてくれた…、
そう思ったのもつかの間、
彼女は私に向けて自分のスマホを見せてきた。
.
頭の中では危険信号が光ってる、
でもここで逃げるわけにはいかない。
彼女がスクロールしていく写真を、
黙って見つめる。
.
彼女の家で、直輝が歯を磨いている写真、
直輝の頬に彼女がキスをしている写真、
直輝がベットの中で眠っている写真、
眠っている直輝を愛おしそうに見つめるあずささんの写真、
最後の2枚、直輝は服を着ていなくて、
……この意味は、さすがに分かってしまう。
.
あずさ｢…私と直輝は愛し合ってるんです。
……私から直輝を取らないでください。｣
.
その場で動けなくなっている私に、
深くお辞儀をして帰っていくあずささん。
彼女の姿がなくなると、一気に張り詰めていた糸が切れた。
足に力が入らなくなって、
その場に座り込んでしまった。
***
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 997人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紙兎
| 作成日時：2020年2月14日 23時
