□74.涙を無視して嘯いた ページ36
***
｢……古い、友人です、｣
あずさ｢友人…？｣
｢……私…、訳あって住むところがなくて…、
居候させてもらってます。
彼に付き合っている人がいることは…、知ってました。
不安にさせてしまって、ごめんなさい…。｣
あずさ｢…婚約者のいる男性と一緒に暮らしている気分はどのようなものでしたか…？｣
｢……本当にごめんなさい、｣
あずさ｢お答えください…！！｣
.
ここに来て初めて声を荒らげた彼女に
そっと視線を送ると、
大きな目からポロポロと涙を流していた。
.
………ああ…、好きなんだな、彼のことが…。
.
.
｢……彼は…、私のことなんて全く興味ないんです…、
ただの昔馴染みで、放っておけないだけで……、
毎日近くにいるけど…、彼は私に本心をさらけ出したりしないし…、信用されてるのかもわかんない…、｣
あずさ｢………だからって…！｣
｢あなたが森島直輝さんのことをどれだけ大切に思っているのかは分かりました…、私の存在が気に食わないのも…、分かってます…、………でも…、｣
.
泣きたくないのに、無条件に涙が零れ落ちる。
…ださいな、私。
ここで泣いたら、意味ないのに……。
.
.
｢…彼は私のことなんてなんとも思ってません…。
…………………私も同じです。
…私は、彼の恋愛対象から1番遠い存在なので。｣
.
泣きながら何も言わずに私を見つめる彼女に、
ぺこ、と頭を下げて、
私はその場から去ろうと彼女に背を向けた。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年2月14日 23時
