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正体 ページ7

「なんで…飛び出したんだい。アテもないのに。それにその傷、さっきは聞きそびれたけど…」

「これは…」

私は蓋をしていた記憶に思考をめぐらせる。
「殺しても海軍は動かねェ」
頭の中にこびりついた声。
そりゃそうだよね、気になるよね。



「私が、天竜人の…子供だから」



言ってしまおう。ここまで優しくしてくれた人達に後々裏切られるのは、もう怖い。


「あの天竜人、の…!?」

ダダンさん達は固まってるようだがエースはなんのことかわからないという顔だ。

「なんだよ、天竜人って」

「世界貴族の…」

「あはは、流石に引きますよね」

今まで子供だと助けてくれた人は私の正体がわかると手のひらを裏返して敵になった。
本当のことを言うと 世界貴族 というものが私にはわからない。あれだけ他人に罵倒されても未だに実感がない。

「私にもわからないんですけど、その元天竜人って事がダメだったみたいで」

いつの間にか恨まれてたみたいで、こんなになっちゃってました。
と包帯でぐるぐる巻きの体を眺める。
こっちの世界に来てからずっと他人事だ。父上に捨てられてから…もう随分と心が動かない。

「だから、関わっちゃいけないんです。
きっとあなた達のことも傷つけるし、もう親の肩書きで裏切られるのは…怖い」

「…」

誰も言葉を発せないみたいだ。

「だから、すみません。
本当にお世話になりました」

再度ドアを開けて出ていこうとした時。
ダダンさんが立ち上がる。

「お前…」

あ、これ殴られる。
知ってる。この感覚。

血相変えて私の前に立つ大人。

やっぱり。でもこれ以上優しくされるより…殴られてでも蹴ってでもしてくれた方が私は楽―

「今まで辛かったな」


ダダンさんは泣いていた。


「えっーー」

他の山賊たちもそれに合わせて泣き出す。


「…なんで、」

「そりゃあ小さい娘がそんな包帯巻いてどんな大罪人なのかと思えば…ただ他人の恨みを買っただけなんてあんまりじゃないか」

わんわんと泣いている大人たちに少し驚きながらも…私を想って泣いてくれる人達がこの世にいることに緊張の糸が切れたのか、堰を切ったように涙が溢れ出す。


「なんで…

なんでダダンさん達が泣くんですかぁ…」


その日の夜は、誰も人が寄り付かない山の中の小屋で、大人たちと一人の娘の泣き声が数時間響き渡った。

境遇→←小脇に抱えられる



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Keiko03090407(プロフ) - 続き気になる(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク (2022年11月3日 1時) (レス) @page42 id: 0dc3919b36 (このIDを非表示/違反報告)
ベーコン?(プロフ) - この作品めちゃくちゃ好きです…!!続きめっちゃ気になります!! (2022年8月18日 13時) (レス) id: 45dc28a220 (このIDを非表示/違反報告)
お猫 - 好きすぎるぅ! (2022年8月18日 12時) (レス) @page42 id: 34150a8be7 (このIDを非表示/違反報告)
air(プロフ) - あくもんさん» とても嬉しいコメントありがとうございます…!あくもん様の応援に応えられるように頑張りますね…!ψ(。。) (2022年8月13日 18時) (レス) id: 3c653399f3 (このIDを非表示/違反報告)
あくもん(プロフ) - この作品めっちゃ好きです!続きが気になる………!!無理しないでこれからも更新頑張ってください!楽しみに待ってます!! (2022年8月12日 23時) (レス) @page41 id: cfb31e7c1d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:air | 作成日時:2022年7月14日 20時

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