水晶玉 ページ9
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この国の王は顎元に手をあて、透明な球を眺めていた。
「クリスタルボール」と呼ばれるその水晶玉の中には、数日前に地界に落とした息子が映っている。
彼は同い年程の女性を見ていた。
王はその眼差しに、
今まで見合わせてきた貴族達の誰にも向けなかったその柔らかい目を、あろう事か地界の人間に。
「……何をしている」
低く、深い声が白い宮殿に響いた。
隣で見ていた召使は表情も変えず、水晶玉を煌びやかな箱に閉まった。
「殿下を1度天界にお戻し致しましょうか」
「ああ」
王はただ一点を見つめ、何かを深く審議するようだった。
召使は宮庭の噴水から出る、
青水色のシャボン玉のような物に折りたたまれた小さな紙を投げ入れる。
「…
そうして深くお辞儀をすると、それは青白く美しい鳥となり、地界へと飛び立って行くのだ。
地界と天界を結ぶ、唯一の伝書鳩である。
「……どうか」
召使はきゅっと目をつぶる。
__どうか、殿下が恋をしていませんように。
彼女は召使として声には出せないその願いを、心の中で唱えた。
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あぽろだよ。 - ほんとにすみません。ブラコンが揺れていた。に見えました。すみません。 (2020年4月23日 17時) (レス) id: b5c026bc9f (このIDを非表示/違反報告)
りぃず(プロフ) - ありがとうございます、、!暗くなったり明るくなったり色々忙しい小説ですが、応援して頂けると嬉しいです…! (2019年6月24日 7時) (レス) id: 7803f93653 (このIDを非表示/違反報告)
つくし(プロフ) - 実は作られたときから、ずっと好きで読んでました…。これからも更新頑張ってください!応援してます! (2019年6月23日 13時) (レス) id: ad001c401a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りぃず | 作成日時:2018年12月31日 12時